いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

映画

エイジズム、ルッキズムを先取り 今解き放たれる幻のロメロ作品『アミューズメント・パーク』とは?

今日から公開された“ゾンビ映画の父”ジョージ・A・ロメロが監督した『アミューズメント・パーク』は、長らく封印されてきた作品だ。 youtu.be 本作は、もともとは年齢差別や高齢者虐待について世間の認識を高めるために、ルーテル教会がロメロに依頼した企画…

“子ども向け映画”の枠をぶち破り現代社会に接続する『クレヨンしんちゃん』

今さら感がすぎるのだが、先日、『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』を観てきた。 延期されていた劇場公開が7月30日からで、10月のこの時期にまだ上映されているということが物語っているとおり、名作だった。 全寮制のエリート校「私立天下…

『世界で一番ゴッホを描いた男』 “職人”を“芸術家”に変えた「アウラ」の正体

世界で一番ゴッホを描いた男(字幕版) チャオ・シャオヨン Amazon 本作は、中国の深圳市近郊の「大芬(ダーフェン)油画村」という、複製画が世界的な産業になっている地が舞台。世界中からのオファーを受けて、画工と呼ばれる職人たちが、世界の名画をせっせ…

SNSに書かされる

最近、下記のような騒動があった。 www.nikkansports.com この作家先生、ツイッターでフォローしていないのだが、毎日毎日誰かがリツイートやいいね!を押すもんだから、たびたび流れてくる。医師らしく内容は感染症に関しての専門的な知見であることも少な…

なぜ幼児2人は死ななければならなかったか 『子宮に沈める』が想像を掻き立てる“余白”

子宮に沈める 伊澤恵美子 Amazon 2010年に大阪2児餓死事件という痛ましい事件が起きた。 大阪市のシングルマザーが、自宅マンションに3歳長女と1歳長男の2人を2ヵ月弱にわたり放置し、餓死させた事件だ。 本作『子宮に沈める』はこの事件を元にしているが、…

オリンピック映画『ブロンズ!』が描く“人生のピーク”からの降り方

オリンピックというと、その結果にばかり注目が行きがちだ。メダリストかどうかは大違いで、金か銀か銅かでも人生が変わってくる。「参加することに意義がある」という建前はどこへやら。今やほとんどの人はその「結果」にだけ注目してしまっている。 しかし…

『竜とそばかすの姫』レビュー 説得力がない3つの理由

細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』を観てきた。 インターネット上の仮想空間<U>(ユー)で人々が自分の分身<As>(アズ)を操れるようになった世界を舞台で、“歌姫”Belleとして才能が開花させた田舎の女子高生・鈴。現実と<U>のギャップに戸惑い…

シラフの女に何もできない男たちと、“名無し"で忘れ去られる女たちについて 映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』

www.youtube.com シラフの女に何もできない惨めな男たち キャリー・マリガンが演じるのは、30歳のコーヒーショップ店員、キャシー。彼女はバーでぐでんぐでんになるまで酔い潰れ、案の定、鼻の下を伸ばした男が「介抱」の名目で近づいてくる。男が狙いどおり…

『100日間生きたワニ』ワニを生き返らせてまで作るべきだったか?

いろんな意味で盛り上がっているのか盛り上がっていないのか分からない、『100日間生きたワニ』を観てきた。 www.youtube.com 言わずと知れた『100日後に死ぬワニ』(以下『100ワニ』)を原作とする劇場アニメで、公開される前からネット上では嵐レビューや…

眠れない!辛い!超わかる!全人類共感型の恐怖のパニック映画が爆誕

フィクションでは空腹、喉の乾きといった「渇望」の表現は、今まで無数に描かれてきた。しかし、空腹や喉の乾きと同じぐらいぼくらの身の回りにあるにも関わらず、あまり深くは描かれてこなかった「渇望」のジャンルがある。それは「眠り」である。 本作『AW…

“上メセ”リベラリストが保守的な田舎にやって来た! 映画『ザ・プロム』が描く手厳しい視点

2016年の大統領選において、ヒラリーが“差別主義者”トランプに敗れたのは、アメリカのリベラル派にとってトラウマ的な事象だと思われるのだが、ネットフリックスで配信中のミュージカル映画『ザ・プロム』はその視点もきちんと取り入れているところが関心さ…

【ネトフリ】VODで観られる19作! 今年のアカデミー賞候補作【アマプラ】

Netflix、Amazonプライム・ビデオのオリジナルもしくは独占配信作品19作をまとめてみた。 Netflix→【NF】 アマプラ→【AP】 ★印が評者のおすすめ度 太字が主要5部門 【あわせて読みたい】 【NF】シカゴ7裁判 ★★★★★ www.netflix.com 作品賞脚本賞助演男優賞撮…

今こそ観るべきSF短編映画『隔たる世界の2人』 「終わりなきループ」が意味するものとは?

いったい何度、同じ過ちが繰り返されるのだろう?――Netflixで今月から配信され、週明けに発表されるアカデミー賞にもノミネートされた映画『隔たる世界の2人』は、わずか30分強の内容にもかかわらず、その悲痛な問いが凝縮されている。 SFの人気ジャンル「ル…

「バスケ映画」に隠された重大なメッセージを見逃すな『ハイ・フライング・バード -目指せバスケの頂点-​​』

「バスケットボールの映画だと思ったらなんだか難しい映画で途中で投げ出した」みたいなレビューを、本作を観た後にネットで目にしてしまった。自分の興奮に冷水を浴びせられるような気になったのだが、もしやと思って見ていくと、そうした「難解」「何が起…

被害者と加害者の対話 あらわになる信教者の素顔と矛盾『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』

www.youtube.com 26年前、日本の中枢でオウム真理教が引き起こした国内初のバイオテロ、地下鉄サリン事件。本作は、この事件の被害者の1人で、猛毒サリンの後遺症に今も悩まされているさかはらあつし監督が、当時の教団幹部で後継団体の広報部長を務める荒木…

“実力主義の皮を被った前例主義” 韓国映画『野球少女』が描く差別の構造

韓国ドラマ『梨泰院クラス』にて、トランスジェンダーの美少年・ヒョニ役を演じた女優イ・ジュヨンが、プロ野球選手を目指す女子高生を演じる、『野球少女』を観てきた。 www.youtube.com この予告編を観てからの「多分こういうのだろうな」という予想からほ…

平穏でとりとめのない、でもかけがえのないアイツとの日々。『パドルトン』が描く“親友”のオルタナティブ

今日はネットフリックス映画『パドルトン』を紹介したい。 www.netflix.com 冒頭の医師との会話なども含め、アレクサンダー・ペインの映画のような、全編ちぐはぐな会話が笑えるコメディーなのだけど、観終わったら胸がいっぱいになるような、不思議な映画だ…

『花束みたいな恋をした』 あまり語られない「出自」の話

ノベライズ 花束みたいな恋をした 作者:坂元 裕二 発売日: 2021/01/04 メディア: 単行本 菅田将暉、有村架純がダブル主演し、坂元裕二が脚本を書いた映画『花束みたいに恋をした』。猛烈に「誰かとしゃべりたい欲」を掻き立てるこの作品において、案の定、ネ…

ミソジニーが引き起こした恐るべきテロの追体験『静かなる叫び』

『メッセージ』、『ボーダーライン』、『複製された男』、『プリズナーズ』、そして約35年ぶりの新作となった『ブレードランナー 2049』を手掛け、さらに今年はSF超大作の再映画化『DUNE/デューン 砂の惑星』の命運を託された、今もっとも注目すべき監督、…

連続殺人鬼に密着する全くありふれていない“モキュメンタリー”『ありふれた事件』

Netflixやアマゾンプライム・ビデオは、オスカーにノミネートされるほどの高水準のオリジナル作品が魅力だが、一方、世間ではあまりU-NEXTの利点が浸透していない気がする。U-NEXTは先の2サービスに比べると、少し昔の知らない映画に出会えるという利点があ…

すべては元帥様のために! 全体主義国家の“検閲”を隠し撮りした異色作『太陽の下で -真実の北朝鮮-』

太陽の下で -真実の北朝鮮-(字幕版) メディア: Prime Video 独断と偏見で言えば、優れたドキュメンタリーは必然、「ドキュメンタリーについてのドキュメンタリー」になっていると思う。昨年衝撃を受けた『さよならテレビ』もそうだった。 ドキュメンタリー…

快作『ヤクザと家族 The Family』がヤグザという「令和のマイノリティ」を通して描いたもの

藤井直人(みちひと)監督の最新作『ヤクザと家族 The Family』を観てきた。 圧倒された。間違いなく、今年の年間ベスト10争いに入ってくる一作だ。 SNSでは坂元裕二脚本の『花束みたいな恋をした』が絶賛され、大いに盛り上がっており、その中でこの作品を…

誰かに認められたい! たとえそれが偽りの姿であっても…映画『ナンシー』がせつなすぎる(ネタバレあり)

ナンシー(字幕版) 発売日: 2020/07/06 メディア: Prime Video アマゾンプライム・ビデオで、レンタルが100円になっており、このサムネイルのインパクトに負けてポチった一作。ということで、大して期待はしていなかったのだけど、これがまたいい意味で予想外…

狂気の眼力に釘付け! 彼は善人なのか? 悪人なのか?『聖なる犯罪者』

ポーランド発の映画『聖なる犯罪者』は、とある犯罪で少年院に収監されていた青年が、出所するところから始まる。この男、ダニエルは収監中に宗教に目覚め、カトリックの司祭になりたかった。しかし、罪を犯した彼に神学校の道は閉ざさされている。彼にはあ…

愛する人、故郷を奪われた者たちの壮絶な復讐劇 『ナイチンゲール』

映画の感想について、ここ数年はあまり書かなくなっていたのだけど、書かずにいることで起きる最大の悲劇は、「あんなに衝撃を受けたのに、感動したのに、内容を覚えていない…!」ということである。 今年は毎月必ず、その月に見た映画で面白かったものを1~…

【450本観た上で決定!】2020年度いいんちょ映画祭ベスト10

2020年もあと10分というところで駆け込み更新! 今年の劇場鑑賞数が73本。昨年が114本だったので、だいぶ減りました。やっぱりコロナの影響は否めない状況です。 ただ家にこもりっきりだった分、全鑑賞数はついに450本ジャスト。自分で言うんもなんですが、…

連休はこれ観とけ! Netflix・アマプラで観られる厳選映画8選【配信限定掘り出しもの編】

前回のドキュメンタリー編に続き、今回は劇映画で掘り出し物を紹介したい。 『アイリッシュマン』『マリッジ・ストーリー』『ROMA/ローマ』みたいにすでに世界的に評価されているもの、『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』『シカゴ7裁判』『オー…

連休はこれ観とけ! Netflix・アマプラで観られる厳選映画16選【ドキュメンタリー編】

今日から年末年始の休みという人も多いということで、ガラにもなくこういう記事を作ってみた。「いかがでしたブログ()」とバカにしていたのだが、いざ自分で選んで、紹介文も書いていたら時間はかかるはめちゃくちゃしんどいはで、すべてのまとめ記事作成…

本当の“あたおか”は誰? 『ミセス・ノイジィ』が問う「一方的に笑い者にする側」の異常

「ルビンの壺」というイラストがある。心理学者エドガー・ルビンが考案したイラストで、一見、壺が描かれているように見えるが、よくよく見ていると2人の人が向き合っている図にも見えてくる。逆に、2人の人が向き合っているイラストだと思った人が、ふとし…

“青春映画”の皮を被った世界観をめぐる壮大な戦い『町田くんの世界』

毎回、ここで映画について書く前は、いちおうウィキペディアなどスタッフやキャストの略歴を調べてみたりもするのだが、今回は監督がまだ37歳だということに驚いた。俺とたった2つ違いかよ…。今回は、石井裕也監督の才覚に舌を巻いた、『町田くんの世界』を…