いったい何度、同じ過ちが繰り返されるのだろう?――Netflixで今月から配信され、週明けに発表されるアカデミー賞にもノミネートされた映画『隔たる世界の2人』は、わずか30分強の内容にもかかわらず、その悲痛な問いが凝縮されている。
SFの人気ジャンル「ループもの」といえるが、本作がほかの「ループもの」と一線を画しているのは、これが「SF」と言い切れないためだ。本作が描く「ループ」は、ある意味で現実と地続きだ。
主人公はNYに住むアフリカ系青年。ワンナイト・ラブでよろしくやった女の子とはいい感じで、また次も会えそう。いい気分で彼女のマンションを出て、愛犬が待つ家まで帰ろうとしたとき、彼は白人警官に呼び止められる。
完全な誤解なのだが、次第に両者のやり取りはヒートアップ。ほかの警官が応援に来たことでさらに場は緊迫した空気に包まれ、彼はついに取り押さえられて地面に押さえつけられる。首を圧迫され、「息ができない! 息ができない!」と訴える中、彼は絶命してしまう。
しかし、ふと目覚めた彼は、さっきまでいた女の子のベッドの中。同じ日が繰り返され、何度そこから抜け出そうとしても、白人警官に殺されてしまう青年。どんな方法、どんな手段を試みても、最後は殺されてしまう。彼はただ、愛犬が待つ家に帰りたいだけなのに…。
終盤ではついに、警官と対話に成功し、相手と打ち解けたかに思えた青年。しかし、「話せばわかる」と言いながら射殺されていった宰相がいるように、そんな簡単にことが済むわけがない。本作でも、生易しい展開が用意されていないどころか、鑑賞者を絶望的な気持ちに追いやる展開が待っている。
しかし、ただ絶望させるだけでもない。最後に主人公を通して、「このループをいつか終わらせてやる」という強い意思を感じさせる余韻を残す。
本作が暗喩どころか、もはや直接的に言及しているジョージ・フロイド死亡事件について、今日、白人警官に有罪判決が下され、日本でも大きく報じられている。
「ループ」はいつか終わらせなければならない。今日こそ観るべきSF映画だ。
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