いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

そろそろぼくらは『速報!歌の大辞テン』の文化的意義を評価するときではないか

よく会社のおじさんやおばさんなど、年配の人に古い歌謡曲の話題をされると、意外とこっちがついていけることに「こんな歌よく知ってるね!」「生まれる前でしょ?」などと驚かれることがある。 しかし、これは別に何もぼくが特に(最近流行りの)昭和好きで…

「娼婦」と「妻」は分かり合えるのか?/映画『午後3時の女たち』

www.youtube.com 「昼は淑女、夜は娼婦」という言葉がある。普段は貞淑に見えるけど、夜ベッドの上では乱れる女性が理想的という、男都合の少々アレな言葉だ。 しかし元来、家父長制がこの淑女と娼婦の両者を、昼と夜ではなく、内側に淑女=妻や娘を囲い込み…

あえて“語らないという方法で名指しで批判する”のは誰か/映画『助産師たちの夜が明ける』

監督:レア・フェネール 出演:エロイーズ・ジャンジョー/ミリエム・アケディウ 原題:Sages-femmes 英題:MIDWIVES 日本版字幕:松岡葉子 医学用語字幕翻訳協力:田辺けい子 宣伝デザイン:日用 宣伝広報:スリーピン 原田徹 Webデザイン:竹内健太郎 www.y…

「Mリーグなんてただの“運ゲー”じゃん」と絶望した俺が不死鳥のごとく蘇るまで

本ブログでも何度かは書いていることだが、ここ数年麻雀にハマっている。麻雀は自分でプレイするのも楽しいし、プロが打っているのを見るのも楽しい。 しかし、そんな麻雀について考えれば考えるほど、麻雀への「愛」、とくにMリーグなどの競技麻雀への「愛…

ヤマもオチもない…でも確実に大切なことを「言いよどむ」映画『アシスタント』

映画館で配られていたポスター。観終わった後に見ると多面的な意味が浮かび上がってくるいいアートワーク 観終わって、まだ観ていない人に説明しようとするときになって、気づく。あれ? あの映画は何を描いたんだろう? ヤマもオチもなかった…と。でも、そ…

「常連客」になる才能がない

会社帰りに家の近くで行ってみたかったお店に3軒に立て続けに満席を理由に断られ、仕方ないとはいえ流石にテンションが下げながら松屋に流れ着く。今トンテキ定食を食べているところである。 みんなの食卓でありたい松屋である。なかなかの大風呂敷を広げた…

『まつもtoなかい』が“かとりtoなかい”以上に本当に見せたかったもの

先週の『まつもtoなかい』で中居正広と香取慎吾が“再会”したシーンは、間違いなく今年のテレビバラエティ史のハイライトの一つになるだろう。 この投稿をInstagramで見る 香取慎吾 Shingo Katori(@katorishingo_official)がシェアした投稿 もうすぐTVerの配…

【2022年のおすすめ映画】俺デミー賞発表!【今年もお疲れ様でした】

年末恒例の年間映画ランキングのお時間です。 今年は劇場、配信含めて561本を鑑賞。前年比でなんと107本も減少してしまいましたが、これは映画への情熱が冷めたわけでも、仕事への情熱が突然湧いてきたためでもござません。スプラトゥーンと麻雀のせいです。…

『M-1』ウエストランド優勝にゴチャゴチャ言い出す人々に抱いた違和感

「人を傷つけない笑い」「人を傷つける笑い」って何? 今回のウエストランドの優勝を受けて、SNS上で「“人を傷つける笑い”の復権」「ポリコレへのカウンター」などと唱える声がある。 おさらいすると「人を傷つける笑い」とは、2019年大会決勝に初進出したぺ…

われわれサラリーマンが森保監督から学ぶべき大切なこと

いやはや恐ろしいものを見てしまった。親のセックスとかではない。この約3週間のサッカー日本代表を巡る世論の手のひら返しの連続である。 ドイツに勝ってやれ大金星だのでかしたポイチだの言っていれば、その数日後にはコスタリカに負けて親の敵のようにボ…

「快適な不自由」より「不快な自由」を選べ 『ドント・ウォーリー・ダーリン』のマニュフェスト

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー 通常版 [Blu-ray] ケイトリン・デヴァー Amazon 映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』で鮮烈な監督デビューを飾った女優オリヴィア・ワイルド。2010年代を代表する傑作青春コメディだが、そん…

人生がしっくりこないアラサーアラフォーが見る映画『わたしは最悪。』

約1万キロ離れた北欧の人たちに自分の見透かされているような気がする映画だ。もしかして、これは世界的に起きていることなのだろうか? 子どもの頃から秀才のユリヤは大学は医学部を専攻。しかし、「私は人を切ったり縫ったりするのに興味があるわけではな…

『ハケンアニメ!』撃沈ムードから復活もたらした“好き”という名のバトン

『ハケンアニメ!』という映画を観た。 派遣社員のアニメではない。そのクールのアニメ界隈の話題をかっさらう(=覇権をにぎる)アニメをめざして作る者たちの映画だ。 吉岡里帆が演じる主人公は、アニメ制作会社・トウケン動画の伝統ある放送枠、夕方5時台…

『シン・ウルトラマン』が『シン・ゴジラ』の熱狂を超えられなかった理由

ウルトラマンTシャツと蒲田くんのスマホスタンド(重宝してます) 大ヒット中の『シン・ウルトラマン』。個人的には、チープな昭和特撮の雰囲気や、ゼットンの斬新な解釈、メフィラス山本耕史など好きな部分もたくさんある作品で、近年の商業的に成功した邦…

鬼越トマホーク『ゴッドタン』で見せた「セルフ文春砲」の生き様 きっかけは後輩芸人からの批判だと邪推してみた

突然始まった「セルフ文春砲」 先週の『ゴッドタン』(テレビ東京系)に出演した鬼越トマホークがかっこよかった。 仲悪くて本番笑いを取るコンビの時代は終わりました。今は仲良くて本番笑いを取らないコンビの時代です。 pic.twitter.com/xEDSXMzE2X — 鬼…

サヨナラBLOGOS

このブログを長らく転載してもらっていたBLOGOSが明日でサービスの更新を終了する。 泡沫ブロガーとしては、大手企業が運営するプラットフォーム上に、何年にもわたって、しかも無料で拙文を転載してもらっていたことに感謝しかない。 ぼくのブログの転載が…

敗者の足跡は勝者と同じぐらい美しい~『M-1グランプリ2007』トータルテンボスの場合~

麻雀にハマっている筆者だが、やっていてつくづく思い出すのは、「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」という野村克也の言葉だ。 麻雀は「運ゲー」だと評する人がいる。それはある意味で正しいけれど、それは麻雀というゲームの真実の姿を半分…

信じられないような料金の引っ越し業者に依頼したら信じられないような引っ越しに仕上がった

家から駅に行く道すがら、246の反対車線に懐かしい“もの”を見かけてしまい、思わず声をあげ、ついでにスマホで写真まで撮ってしまった。 それはある引っ越し業者のトラックである。○○引っ越し社―――その名前をつぶやいただけで、ぼくの脳裏にあの凄惨な、おぞ…

回し蹴りに自殺未遂「なんそれ!」ではすまされないZAZYの壮絶すぎる生い立ち

以前、洋裁用品店で見つけたZAZYになれそうな棚 奇妙奇っ怪なフリップ芸と、「なんそれ!」の決め台詞で昨年のR-1グランプリ準優勝と健闘したZAZY。昨年末、ニューヨークのYouTubeチャンネルに出演した際、思いの外ディープな生い立ちを語っていた。 www.you…

「世界にたった一人の運命の相手」を探してさまよう人に届けばいい映画『恋をするなら今宵のディナーで』

この世界のどこかに、自分の対になる“運命の人”がいるはず――そう考えるのが恋愛における運命論だが、Netflixで配信が始まったイタリア・ポルトガル製作の映画『恋をするなら今宵のディナーで』は、そんな運命論に過度に期待しすぎている人に届いてほしいよう…

今年も“じゃない方会社員”で生き延びたい

もうそろそろ2年前になるだろうか。かつて『水曜日のダウンタウン』で「なにやら占い師に傾倒し始めた相方が改名を訴えてきても応じられない説」が検証された。 ドッキリで、コンビの片方が相方に対して、メチャクチャな芸名やコンビ名の改称を提案する様子…

【今年公開&配信198本】2021年度映画総合ランキング ※お詫びあり

恒例の年間映画ランキングのお時間です。 今年は668本鑑賞し、日本公開、配信は198本でした。 198本の中からランキングを決めます。もう10本では収まりきらんということで、すでに邦画、洋画、配信に決めました。 タイトルにあるとおり、数本、「これは入れ…

『明け方の若者たち』が悪いんじゃない。ぜーんぶ今年の邦画たちが悪いっ!

今年2021年は、東京の井の頭線沿線や中央線沿線の下北沢や明大前、高円寺といった若者に人気のエリアが印象的な役割を果たす邦画が多く誕生した。そんな今日、大晦日に名実ともに今年を締め括る形で公開される映画が『明け方の若者たち』だ。 www.youtube.co…

人口900万人に救急車わずか45台のメキシコシティで活躍する“闇救急車”の実態 『ミッドナイト・ファミリー』

(C)_FamilyAmbulanceFilmLLC_Luke_Lorentzen 世界は広い。まだまだ知らないことがたくさんある。ドキュメンタリー映画を観る醍醐味は、自分の全く知らない時間・場所に連れて行ってくれるところにある。『ミッドナイト・ファミリー』もそんなドキュメンタ…

『ラストナイト・イン・ソーホー』で連想した5本の作品<微量のネタバレが含まれます>

今年の大傑作の1本といえばエドガー・ライト監督の『ラストナイト・イン・ソーホー』だ。映画とその歴史に対して常に批評的な姿勢をとり続けるライト監督であるからして、もちろん本作にもさまざまな過去作の引用、パロディが隠されているが、それらとは別に…

苦労人・錦鯉に優勝もたらした『M-1』の気まぐれな“女神” 相反する2つの要素

『M-1グランプリ2021』王者・錦鯉 50代と40代のコンビの優勝という劇的な結末で幕を閉じた『M-1グランプリ2021』。 マヂカルラブリー優勝という驚がくの答えを出した昨年も偉そうに分析していたのだが、このとき書いた傾向は今年も継続し、より深化している…

『水曜日のダウンタウン』“双子芸能人”の説 なぜ「怖い」と感じるのか

先日、『テレビ千鳥』が優しさで巧妙に隠した悪意について書いた。 iincho.hatenablog.com 一方、“悪意”の表出とそのバリエーションにおいては、当代一と言われる『水曜日のダウンタウン』の15日放送回「ザ・たっちにもピンの仕事あるにはある説」もすごかっ…

「青春の犠牲者」か?それともこれが「本当の青春」か? 男性ブランコが味わった“大学文系サークル”の闇

『キングオブコント2021』準優勝に続き『M-1グランプリ2021』でも準決勝進出 躍進が続く男性ブランコ 『キングオブコント2021』で惜しくも準優勝、『M-1グランプリ2021』でも準決勝まで勝ち進んだ男性ブランコ。躍進する2人がニューヨークのYouTubeチャンネ…

「漫才論争」という”愚問" 「こんなの◯◯じゃない」と叩くのが恥ずかしい理由

自分があまり詳しくないジャンルにおいて“未知のもの”を観たとき、人は二通りの反応をする。「こんなの○○じゃない」と拒絶するか、「こんな○○初めてだ」と驚くかだ。 もう来週に迫った今年の『M-1グランプリ』だが、昨年のマヂカルラブリー優勝の際、彼らの…

10代女子たちのバカンスと思いきや…“いま・ここ”に集中できない我々を風刺した映画『ひと夏の体験』

www.youtube.com 3人の女子高生(?)が、どこかの南国の浜辺にバカンスにでかけた様子を淡々と描く映画『ひと夏の体験』は、一見すると終盤までほとんど何も起きない、つまらない映画に思える。非日常的な場所を訪れ、開放的になったうら若き乙女たちが、乳…