いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

『明け方の若者たち』が悪いんじゃない。ぜーんぶ今年の邦画たちが悪いっ!

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今年2021年は、東京の井の頭線沿線や中央線沿線の下北沢や明大前、高円寺といった若者に人気のエリアが印象的な役割を果たす邦画が多く誕生した。そんな今日、大晦日に名実ともに今年を締め括る形で公開される映画が『明け方の若者たち』だ。

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東京・明大前で開かれた学生最後の飲み会で出会い、意気投合し、交際することになった「僕」(北村匠海)と「彼女」(黒島結菜)の2012年から始まる約5年の軌跡を描く。

 

本作の不幸は、東京を舞台にカップルの悲喜こもごもの数年を描く、という形式から、嫌が応にも『花束みたいな恋をした』を連想されてしまうこと。残念ながら、あの映画に比べると、会話の強度が全く足りない。どちらかといえばテレビドラマチックな1から10まで説明する脚本が、執拗に俺の集中力を削いでくる。うーん、辛い。

鑑賞者の記憶をゾワゾワなぞってくるような生々しさもなければ、考えさせられるような現実的な葛藤もない。そこにあるのは、そこそこ恵まれ、おセンチに気取った男女のなんでもない日常である。実写版大学生のきしょいストーリーかよ。気の抜けたコーラのような映画だ。そうか、こういうときに人は「気の抜けたコーラ」という言い回しを使いたくなるのか。

 

特に前半は、2人にとっての障害もなければ目標もない(描かれない)ので、何を見せられているんだと困惑させられる。もしかして俺は何か重要なシーンの前に後ろから誰かに殴られ気絶していたのだろうか? 大切なシーンを見過ごしたのか? と不安になってくる。

中盤で2人はフジロックに行くのを取りやめ、車で当て所もなく旅行をすることになるが、当て所もない旅路に連れていかれているのは俺たち観客の方である。まさかこのヤマなしオチなしで2時間突っ走るのか…という心配はさすがに杞憂に終わり、途中でちょっとした種明かしがなされ、トーンは少し変わるのだが…。その後の展開が劇的に面白くなるわけではない。それにしても、この仕掛け(というほど大したものでもない)のために、前半の面白さを犠牲にし過ぎではないか、とも思った。

 

ただ、ここまで悪いことしか書いていないように思われるだろうが、いや実際悪いことしか書いていないのだが、ただ一点、北村匠海のファンや、黒島結菜のファンはこれで満足できるのかもしれない。彼らが悪いわけではないし、この映画が悪いわけでもない。ぼくをもうこの程度では満足できない体にしてしまった、今年の強すぎる邦画の数々が悪いのだ。