いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【書評】紅葉街駅前自殺センター ★★★☆☆

紅葉街駅前自殺センター作者: 光本正記出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る昨年6月に大阪府で起きた通り魔事件の犯人が「人を殺せば死刑になると思ってやった」と供述していることに対し、某府知事の…

死刑希望死刑囚と『完全自殺マニュアル』

安倍新政権になって初めて死刑が執行された。興味深いのは、死刑囚3人のうちの1人と、司法当局、そして死刑制度に反対する人権団体等の三者の主張が、絶妙にチグハグになっているところだ。 すでに報道されているように、死刑囚3名のうち1人は死刑になること…

【書評】これは「就活小説」ではなく、「お前ら」の小説だ〜朝井リョウ『何者』〜 ★★★★★

先日の直木賞を受賞した朝井リョウ『何者』は、就活に挑む大学生たちの青春小説。何者作者: 朝井リョウ出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/11/30メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 317回この商品を含むブログ (96件) を見る書店で初めて本書を開いたと…

『サルチネス』を古谷実ビギナーにこそ読んでもらいたい訳

古谷実の『サルチネス』2巻。サルチネス(2) (ヤンマガKCスペシャル)作者: 古谷実出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/02/06メディア: コミック購入: 2人 クリック: 2回この商品を含むブログ (8件) を見る1巻を読んで予感があり、さらにこの2巻で確信したこ…

【書評】これこそ俺たちが思い描くリア充どもの就活〜石田衣良『シューカツ! 』〜★★☆☆☆

IWGPシリーズや『4TEEN フォーティーン』などで知られる直木賞作家の石田衣良が、就活に挑む大学生らを描いた小説が、この『シューカツ!』だ。シューカツ! (文春文庫)作者: 石田衣良出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/03/10メディア: 文庫購入: 1人 ク…

【書評】羽田圭介『ワタクシハ』★★★☆☆

芥川賞に2度候補になった羽田圭介の『ワタクシハ』は、「就活小説」として手に取った人も多いのではないだろうか。ぼくのいた大学の生協でも、いよいよシーズンに突入した就活生たちに手にとってもらうことを念頭に売られているようだ。「ワタクシハ」 (講談…

陰謀論廃絶の困難を自ら証明した内田樹

朝日新聞での内田樹氏のインタビューが物議をかもしている。 こちらのブロゴスの記事でも紹介されている。内田樹の就活インタビューに含まれる陰謀論がやばい具体的には、この箇所だ。 政治家もビジネスマンもメディアも『国際競争力を高めなければ日本は生…

【書評】ぼくが「回天」にひきつけられる理由 〜横山秀夫『出口のない海』〜

広島出身ということもあり、原爆教育というのを他の地域の子どもより多く受けたはずだが、ぼくが戦争について学んだ中でもっとも印象に残っているものは、実はそこにはない。 あれは家族で行った呉でだったと思うが、そこでぼくは原爆よりもっと仄暗く、底知…

『ビブリア古書堂の事件手帖』や『謎解きはディナーのあとで』がウケる理由

前々回の記事で紹介した田端信太郎『MEDIA MAKAERS』。紹介したとおり、まだまだいろいろ使えるところがある。 その中でも特に、コンテンツにおけるリニア/ノンリニアという二元論は、ここ最近考えていたこととすごくつながる。 リニアとは「線上」という意…

【書評】2010年代の“ウェブ進化論“〜田端信太郎『MEDIA MAKERS』〜9/10点

年の瀬ということでそろそろ書評に帰ってこないと映画ブログになってしまう! ということで書評。MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体作者: 田端信太郎出版社/メーカー: 宣伝会議発売日: 2012/11/12メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 9人 クリック…

山内マリコ『ここは退屈迎えに来て』★★★★★★★☆☆☆

先月のUSTでとり上げた本だけれどあらためて。 内容(「BOOK」データベースより) 地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語。フレッシュな感性と技が冴えわたるデビュー作は、「R‐18文学賞」読者賞受賞作「十六歳はセックスの齢」…

アニメは1人でも作れるし、1人では作れない ――東浩紀『コンテンツの思想』★★★★★★★★☆☆

本書は、思想家であり最近では『思想地図』シリーズで知られる東浩紀が複数の評論家、クリエイターらとかさねた対談、鼎談を収録している。巻末には人名索引と作品名索引があり便利だ。コンテンツの思想―マンガ・アニメ・ライトノベル作者: 東浩紀,伊藤 剛,…

速水健朗『都市と消費とディズニーの夢――ショッピングモーライゼーションの時代』★★★★★★★★☆☆

速水健朗の新著『都市と消費とディズニーの夢――ショッピングモーライゼーションの時代』は、近年起こっている都市のショッピングモール化=ショッピングモーライゼーションについて論じている。都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの…

もしもFacebookユーザーがデスノートを拾ったら……

ミミズが光速に見えるほどの鈍重さでデスノートを読みおえた。 それは一つ前に書いた。 デスノートの基本的なルールをおさらいすると、 1、人の名前を書いたらその人が死ぬ 2、頭に顔が思い浮かぶ人でないとダメ。あてずっぽで「田中太郎」と書いても、見ず…

「秀才とは何か」をデスノートを読み終え考えてみる

光の遅さでデスノートを読んだ。 はじめはイノセントな正義を断行していた主人公夜神月(と書いてライトと読ますDQNネームの走り)が、次第に醜く歪んでいく悲劇的な過程(それはもう顔の表情筋にこれでもかと顕著にあらわれてく)は、ピカレスクロマンの王…

『空手バカ一代』は「経歴詐称」か〜「伝説」が存在し得ない時代に生まれて〜

『巨人の星』や『あしたのジョー』『愛と誠』などの古典的なマンガに最近ちょこちょこ手をだしていて、戦後マンガ史における梶原一騎の重要性を改めて思い知らされているのだけれど、彼が原作をつとめた作品に『空手バカ一代』がある。梶原先生が原作をつと…

ゲームの歴史とは「物語の扱い方」だった!?〜さやわか『僕たちのゲーム史』★★★★★★★★☆☆〜

最近、親会社にあたる講談社の現代新書を圧倒する勢いで躍進する星海社新書から出た一冊。「物語評論家」という不思議な肩書きをもつさわ……さやわかさんという方が著したゲームの歴史の本だ。「物語評論家」というのも不思議な肩書きだが、なによりも「物語…

古谷実のマンガ『サルチネス』のモチーフは北九州監禁殺人か?

古谷実の2年ぶりの最新作。サルチネス(1) (ヤンマガKCスペシャル)作者: 古谷実出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/09/06メディア: コミック購入: 3人 クリック: 117回この商品を含むブログ (16件) を見るネットなどで評判を読むと「またいつもの古谷かよ〜…

グラビアアイドル界の『プロジェクトX』〜『グラビアアイドル「幻想」論』書評〜★★★★★★★☆☆☆

グラビアアイドル「幻想」論 その栄光と衰退の歴史 (双葉新書)作者: 織田祐二出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2011/04/20メディア: 新書購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (7件) を見る本書は長年シーンを追いかけてきた著者が、グラビアアイドル…

「スタバ女」をdisった小説

昨今、回転率ワルくするわ電源がありゃ使いたいだけ使うわそのわりに自分のことをイケてるビジネスマンだと勘違いしてる人たちの総称=ノマド叩きが絶賛盛り上がり中なんだが。 ノマドが叩かれるたびにあたかも共犯みたいにやり玉に上げられてかわいそうなの…

「ごちそうさま」が「メシウマ」に変わるとき

呉智英『言葉の常備薬』を読んだ。言葉の常備薬 (双葉文庫)作者: 呉智英出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2007/06メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 16回この商品を含むブログ (11件) を見る日本語についての日常的な疑問や間違いについてつづったエッセイが…

匿名っぽい実名/実名っぽい匿名 〜青木淳悟『私のいない高校』批評〜

私のいない高校作者: 青木淳悟出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/06/14メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 47回この商品を含むブログ (40件) を見る先月に放送した「いいんちょと愉快な鼎談」第四弾であつかった青木淳悟『私のいない高校』について、こ…

内定のない就活生がつらいのは内定がないからではない〜現代にはびこる内定予定説〜

社会学者のマックス・ヴェーバーに『プロテスタンティズムの精神と資本主義の精神』という本がある。 長々しくかつ仰々しいタイトルだが、本書の立てた問いはとりわけシンプルだ。それは、西欧諸国において資本主義はなぜここまで繁栄したのか?という問いだ…

就職難で自殺する前に俺の話を聞け!

ここ数日、大学生の自殺が話題になっている。 【悲報】就職失敗で自殺した大学生、初の年間1000人突破 : オレ的ゲーム速報@刃このニュースのつい数日前にも、現在は削除されているが大学生を名乗る人物が自殺をほのめかす匿名エントリーを書いて話題になっ…

「限界シリーズ」はなぜわかりやすくておもしろいのか?〜高橋昌一郎『感性の限界』書評〜★★★★★★★★★☆

感性の限界――不合理性・不自由性・不条理性 (講談社現代新書)作者: 高橋昌一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/04/18メディア: 新書購入: 6人 クリック: 67回この商品を含むブログ (31件) を見るタイトルでいきなり結論めいたことをいってしまったが、…

西村賢太『苦役列車』仮想帯

苦役列車作者: 西村賢太出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/01/26メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 266回この商品を含むブログ (120件) を見る

上司に「死ね」なんてふつう送れるか?〜中田宏『政治家の殺し方』書評〜

政治家の殺し方作者: 中田宏出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2011/10/26メディア: 単行本購入: 14人 クリック: 298回この商品を含むブログ (50件) を見る物騒なタイトルだが、前横浜市市長の中田宏氏本人による、中田市政の回顧録だ。ちなみにぼく自身は横浜…

市場主義につきつける2つの「限界」〜マイケル・サンデル『それをお金で買いますか――市場主義の限界』書評〜

前著『これからの「正義」の話をしよう』で、一時は「お茶の間でおなじみ」にまで定着したサンデル氏だが、今回は待望の新刊。原題は『What Money Can't Buy: The Moral Limits of Markets 』。それをお金で買いますか――市場主義の限界作者: マイケル・サン…

もともとそれが当たり前じゃなかったのか〜藤本篤志『社畜のススメ』書評〜

社畜のススメ (新潮新書)作者: 藤本篤志出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/11/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 122回この商品を含むブログ (24件) を見る まえがき 第1章 「自分らしさ」の罪 第2章 個性が「孤立」になる悲劇 第3章 会社の「歯車」…

【提案】記念日に本をプレゼントする文化を定着させればいいんじゃないだろか

日本のラスプーチンこと佐藤優さんがニコ生に出たときに、ロシアでは良書を見つけたら数冊買って読ませたい人への贈り物にするんだということを言っていた。 へぇと思いそれをちょっと前にTwitterでつぶやいたら、大学の後輩のいとしゅんくんが、ぼくの誕生…