Amazonプライム・ビデオ で配信されている『バチェラー・ジャパン』シーズン3の“結末”
「胸糞悪い」という感情は分かるのだが、一方でシーズン1、 2ともに観たぼくに言わせれば、「これまでで最も面白かった!」 ということにもなる。
バチェラーから各回の最後にバラを渡された女性だけが次のステージへ進める。バチェラーの結婚前提の彼女となるたった一つの席をめぐって競い合う。
ちなみに、日本オリジナルの企画ではなく、米国で初めて作られ、 日本と同じように各国で企画は制作・放送されているようだ。
シーズン3となった今回、バチェラーを務めるのは神戸出身、 貿易業を営む友永真也クンだった。この友永クンがいろいろとアレなのが、次第に分かっていくのだが…。
ここからは、なぜ今回の同番組が、前2回に比べて面白かったか、その理由を解説したい。
<<以下、ここからはネタバレ全開で書いていく>>
史上かつてないほど分かりやすい構図
まずなにより、対立の構図が分かりやすい。
3シーズン目となった今回、ラストの2人まで生き残ったのは、 山梨のぶどう農家出身の岩間恵さんと、大阪出身で北新地で10年に渡ってホステスをしていた水田あゆみ さん。
3シーズン目となった今回、ラストの2人まで生き残ったのは、
農家とホステス。これが分かりやすさの理由…ではない。番組上で、2人がファイナルまでに歩んできた道のりが全く違うのだ。
すべては、友永クンが岩間さんに初回で“ガチ恋”してしまったことにはじまる。岩間さんがハマられやすいのはよく分かる。派手すぎず、地味すぎず、いかにもな日本的な美人であり、いわゆる「親に紹介したくなる女性」なのだ。
友永クン、初回で見初めたときから、岩間さんにがっつり心を掴まれたよう。それ以来、岩間さんだけは、少なくとも視聴者からすれば、たいしてバチェラーにアピっていないにもかかわらず、まるでエスカレーター式で、スイスイと次の回に上がっていった。
そもそも岩間さんは、全く友永クンに惚れていないフシがあった。態度がはっきりしない彼女に、終盤では取り乱したバチェラーの無様な姿がどんどん放送される。おいおい、お前バチェラーだろ!? 追いかけられる側だろ!?
一方、水田さんは当初、数多くの女性出演者の中では「ONE OF THEM」でしかなかった。
しかし、 水商売10年のキャリアで培ってきた人心掌握術というのか、接客術で、回を重ねるごとにその存在感は増していき、 スタジオでモニタリングしているタレントの面々からの評価もうな ぎのぼり。
水田さんが岩間さんに容姿で劣っていた、ということは断じてない。 そうではなく、ただ単に「バチェラーの“タイプ”ではなかった」 、それだけである。しかし「タイプである/ない」 の間にどれだけの差があるかは、分かる人には分かることだ。
ここにおいて、まるでシード校の強豪(ヒール)と、 ノーシードで1回戦から這い上がってきた公立校( ベビーフェイス)、そんな対照性ができあがった。 昨年の夏の甲子園、金足農業対大阪桐蔭の決勝戦でも盛り上がったではないか。同じようなものである。
加えて、この戦いは、岩間さんに対してのバチェラー友永クンの一目惚れ、もしくは性衝動=自然と、
前2回の『バチェラー・ジャパン』でも、 最後の2人に絞られたら盛り上がったものだが、今回ほど明確な対抗軸はなく、「これって結局、好みの問題だよね?」 としかならなかった。
友永真也という「掟破り男」
今回のおもしろさを語る上で、やはりバチェラー本人を欠かすことはできない。いろんな意味ですっとこどっこいな(詳細はぜひ、本編を堪能しながら知ってほしい)彼だが、悔しいかな、彼なしではこかまで面白くなかっただろう。
彼がこれまでのシリーズにない掟破りをいくつかしているが、最大にして最悪な掟破りは実は本編収録後に起きていた。
ついに岩間さんから「恋愛感情はない」とまで言われ、泣いちゃった友永クン。ここで一度は心がポッキリ折れたようで、岩間さんを諦めたかのように水田さんを選んだのだった。
…ところが、その後、事態は180度変わる。
一度は水田さんと結婚を前提に交際することになった友永クンだ
このことが、今回特別に設けられた「エピローグ」として配信されると、
一方、ぼく個人はというと、この結末を知ったとき、「悲しい」という感情に襲われた。
自然(性衝動)に人間(理性、 気遣い)が一度は勝ちかけたが、勝てなかった、 そのことが悲しいのだ。我々は性衝動を未だに制御できない。これは大げさではなく人類の敗北なのだ。
一度は結ばれ、すぐにフラれてしまった水田さん。 バチェラーを馬乗りでボコボコにしてもいいぐらいの権利はあるのだが、スタジオで再会した元カレ(交際期間約1ヵ月!)を軽くなじりながらも、笑顔で送り出すその「 グッドルーザー」っぷり。人間力、圧勝っ!
ただ、これは映画でいうところのいわゆる「大どんでん返し」で、おもしろいに決まっているのである。
「あのときはこう言ったけど、実はこうで…」そんな言い訳通るかよ!という話もごもっともであるけれど、それが現実。恋愛リアリティショーがリアルになった瞬間である。
所詮は赤の他人の色恋
予期できたことだが、回を追うごとに、友永クンや岩間さんをはじめとする出演者について、ネット上での「プライベートさらし」が始まっ ている。その中には、この結末について怒りにかられた視聴者によるものもあることだろう。
まったく感心できないことである。 舞台裏をほじくり返すなんて、野暮ではないか。
裏切りや約束の反故なんて、自由恋愛にはいくらでもある。所詮は赤の他人の色恋ごとであり、第三者があーだこーだいうことではないのだ。
ちょっと頭のネジが飛んだバチェラー友永クンは面白かったし、最後までただただひたすらにヒール役を全うした岩間さんも見事。責任を取って友永クンを引き取った、という立場とも言える。
「胸糞悪いけどおもしろい」ーーだから、今回の『バチェラー・ジャパン』 シーズン3をぼくに拍手を送るのだ。