いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

SMAPはますます人気になるだろう

草なぎクンがすごいことになってる。

アイドルグループ「SMAP」の草なぎ剛容疑者が公然わいせつの現行犯で逮捕された事件で、草なぎ容疑者は1人で全裸になって騒いでいたことが23日、分かった。現在もまだ酔っ払っているというが、容疑は認めているという。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090423-00000523-san-ent

しかしこの珍事から、タレントとして求められていたキャラクターがいかに彼自身を抑圧していたかや、あるいはストレスフルな芸能界の仕事に原因があるのではと考えるのは、少しナンセンスだろう。何をいまさら、という話である。
インターネット、あるいはサイゾーを筆頭とする暴露系雑誌を通して、僕たちはこれまで十分に目の当たりにしてきたではないか。ジャニタレに関わらず、タレントというものが、いかにテレビとは別の「もうひとつの顔」を持っているか、ということを。

ここで、ジジェク大文字の他者の嘘について書いている箇所を引こう。

大文字の<他者>とは嘘実の秩序、誠実に嘘をつくことのできる秩序である。ビル・クリントンとモニカ・ルインスキーとの関係を取り上げてみよう。(…)クリントンの嘘が大文字の<他者>に知覚/登記されていない限り、彼が(大統領の「威厳」という)体裁/外観を保っている限り、「ビル・クリントンは嘘をついている」と誰もが周知している(あるいは推測している)事実それ自体が、人びとのクリントンに対する一体感を一層堅固に醸成する素地として働き始めるのだ――ビルは嘘をついており、モニカとのあいだには、実際に何をか言われぬ為し事があったに違いないと世人のあいだで知れ渡ることは、クリントンの支持率に影を落とさないばかりか、その数字を押し上げているのである。


スラヴォイ・ジジェク「厄介な主体2」(180−181p)

おわかりだろうか。クリントンは裏の顔が見破られていなかったから、圧倒的な支持を勝ち得たのではない。むしろ彼のもうひとつの顔が、アメリカ国民に共有されるものになったからこそ、法秩序としての「清廉潔白なクリントン大統領」は国民的人気を獲得したのである。
ここにあるのは、象徴界現実界の裂け目の問題だ。「SMAPの草なぎクン」というタレントは、「清廉潔白、優しい、さわやか、草食系男子、地デジ」というひとつの秩序体系に属している。しかし彼はもうひとつ、「暴力的で、破廉恥で、酒癖が悪い、酔えばところかまわず全裸になる」、という一人の男「草なぎ剛」という現実界をも併せもつ。
これまで、その象徴界現実界との間にあったどうしても架橋できなかったひとつの断絶に、今回の春の珍事はひとつの「回路」を作ったのである。そして、今回のこの暴挙を通じて彼の「もうひとつの顔」を知ったことで、僕らは逆説的に「安堵」を手にしたのだ。これ以降、バラエティー、ドラマ等の、彼が出演するものをすべて、草なぎ剛という男が演じる「SMAPの草なぎクン」を、僕らは存分に楽しめることになる。



申し遅れたが、この記事は釣りではない。僕は本気でそう思っている。おそらく、草なぎクンはしばらく表舞台から姿を消すことになると思う。しかしその後に復帰してきた彼を、僕らは今まで以上にタレント「SMAPの草なぎクン」として、「納得して」応援することになるだろう。