いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

俺たち“ショボいホワイトカラー”は必見! 6年遅れでも激推ししたい『SHIROBAKO』

SHIROBAKO』というアニメが面白いのである。全24話、一気に観てしまった。

「明日に向かって、えくそだすっ!」 

 

2014年の作品である。何を今さら、と言いたいのは分かっている。

アニメには詳しくないが、映画に置き換えてみるとよく分かる。「今田くん、いいこと教えてあげようか? 『ゴーン・ガール』って映画知らないでしょ? 面白いから観てごらん」と、2020年のナウに勧められるようなもんである。何をいまさらである。

でも、この面白さを今語りたいのである。語らせてくれ。

 

SHIROBAKO』の面白さ。一言で言うと、仕事、とくにクリエイティヴには属さない、われわれヒラの会社員、手に職なしの“ショボいホワイトカラー”の「仕事」が凝縮されているのだ。

 

舞台は架空のアニメプロダクション武蔵野アニメーション」、通称ムサニ。入社1年そこそこのヒロイン・宮森は、実際に絵を描くアニメーターでも、ストーリーを作る脚本家でも、ましてや監督でもない。制作進行という、仕事の段取りを作り、各クリエイティヴ部門の制作ペースを管理し、クリエイティヴクリエイティヴを橋渡しするセクションである。クセが強いクリエイティヴたちの間に入って右往左往する彼女の姿に「あ~、これ仕事~」と、何度声に出してしまったことか。

 

SHIROBAKO』が教えてくれるのは、我ら“ショボいホワイトカラー”の仕事とは畢竟、「報告」「トラブルシューティング(もしくはその予防)」「伝え方」、これらに尽きるということだ。

困ったことが起きたら、できるかぎり早く上に「報告」する。自分が上の立場になったら、「トラブルシューティング」の能力と、過去の経験から未然に防ぐ方策も求められる。ときに、同僚や社外スタッフに無茶をお願いする必要もあり、そういうときは「(波風を立てない、できれば相手を気持ちよく仕事させるための)伝え方」も大事だ。

 

マジな話、新入社員は下手な研修をリモートで受けるより、NetflixAmazonプライム・ビデオで、『SHIROBAKO』を観た方がよっぽどためになるぞ。「矢野さんとか井口さんみたいな先輩ほしい(なりたい)〜」とか「メールベースの確認、大事」だとか、「藁をも掴む思いで外注先見つけて発注したけど、納品がクソすぎてかえって仕事が増えた(怒)」といった「仕事あるある」の宝庫なのだ。

 

もちろん、仕事の「現実」だけが延々続くなら、最後には血反吐を吐いて死にたくなるような代物になっているだろう。GWにわざわざ観なくてもいい。

SHIROBAKO』には、制作進行のほかにもアニメーターや声優、脚本家、3DCGクリエイターといったさまざまなクリエイティヴの人々の葛藤と成長も併せて描かれる。

「現実」にいい塩梅で、「アニメーションのお仕事」という、われわれ一般視聴者にはなじみのない「ファンタジー世界」が合体しており、そのバランスが絶妙なのである(一方、アニメ業界人からしたら「アニメあるある」として楽しめるらしい)。

 

TVシリーズは全24話ある。前半の12話はムサニが久しぶりに元請けとなるオリジナルアニメを作る過程だが、後半12話ではムサニが人気コミックスのアニメ化の制作幹事となってプロジェクトを動かすことになり、宮森たちの「仕事」はより混迷を極める。前半では主に社内の「ヤバイやつ」に対処しておけばよかったのに、後半になると、社外の「(気を使わないとならない)ヤバイやつ」「仕事が雑なやつ」「言ってたことを反故にするやつ」「直接連絡とれないやつ」などが次々と宮森の前に立ちはだかるのだ。

 

観ていると、“ショボいホワイトカラー”もいるだけの存在ではない、という不思議な高揚感が湧いてくる。手に職なし、上等である。クリエイティヴクリエイティヴの点と点を、線で繋いでいく役割も、立派なクリエイティヴではないか。

コロナ禍で、ここ2ヵ月ほど「会社員」っぽくなくなっている自分に、「“ショボいホワイトカラー”とはなんぞや」をリマインドしてくれる貴重な作品だ。