今さらながら、おそるおそる観た。日本漫画最高峰の一作を、米国ハリウッドが満を持して実写化した作品。
予め言っておくと、今作はそのデキの悪さから、あのエメリッヒ版「ゴジラ(のようなもの)」と同様、公式シリーズからも抹殺されかねない勢いである。作者の鳥山明氏も「『たぶんダメだろうな』と予想していたら本当にダメだった某国の実写映画」と、破門にする一歩手前である。
さて、そんな一作だが結論から言うと申し訳ない、最初から最後まで何一つ感心する箇所がなかった。外交問題に発展してもおかしくないレベルである。
どこからツッコんでいいのかわからないが、まずこのサブタイトル「エボリューション」のとってつけた感。とりあえず、横文字入れときゃ見栄えいいっしょ?的な感じ。これがダサい。
DVDに関していうと、レンタル版とはいえメインメニューの手抜き感も、スゴいことになっている。なぜこの画像を選んだし……。
作品全編にいえるのは、圧倒的なチープさである。制作費がなかったのかというとそうではなく、約45億円もかけてこのレベルかという話で、誰かがネコババしたんじゃないかと勘ぐりたくなる。ゴジラはまだ、ジャン・レノとかで絵面的に見られたものだが、本作はマジでショボい。ラスボスとなるピッコロ大王もひっそりとしたもので、人類の存亡という話のスケールの大きさが全然伝わらない。
内容に関しても、仏作って魂入れずというもので、どーでもいいところは忠実に再現し、肝心なところが改変されてしまっている。
象徴的なのは、やはり主人公の悟空だ。海外の熱狂的なファンの方ですか? という外見は百歩譲っても、設定が遺憾ともし難い。悟空の性格といえば、後にルフィも踏襲することになるが、基本的にはおおらかで能天気なところだと思うのだ。ボケとツッコミでいえば明らかにボケ。そしてそれが作品そのものの大きな魅力の一つだったはず。でも、この作品にはその要素がまっっっったくない。
設定は高校生なのだが、祖父の御飯に言い含められ学校では秘めたる武力を隠し、その反面イケメンなのに不可解にもいじめられている。なるほど、原作での息子・御飯の青年時代をモチーフにしているという話だが、表面的には、ハリウッドのハイスクール映画定番の初期設定に、『ドラゴンボール』の側をお気軽にはめ込んだようにしか見えない。悟空がクラスメートの女の子(=チチ)に鼻の下を伸ばしているという光景は、許し難い。
また、漫画『ドラゴンボール』にいえるのは、圧倒的なリーダビリティ(読みやすさ)である。そしてそれは、映画という別メディアでは、復元しようがない魅力でもある。本作「ドラゴンボールもどき」、もとい「ドラゴンボール エボリューション」を鑑賞する唯一にして最大のメリットは、映画と漫画という作品ジャンルが、どちらが上でどちらが下かという序列に並べられるものでなく、そもそもが別物だという当たり前の事実を、あらためて実感できることだろう。
批判を受けていることに対して、製作サイドは「この作品はドラゴンボールファンのためのものではなく、新しくドラゴンボールのファンになる人々に向けて作ったもの」と反論したそうだ。
巨額をかけた大きなお世話である。彼らにいえることは、新しくファンになる人には漫画を渡せよ、変な入口を作るなよ、ということである。
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