昨日の事案発生から局所的に盛り上がっていた話なのですが。
安藤美冬さん、笑っていいともで“ノマド”を語る - NAVER まとめ
中川淳一郎さんのこのツイートが、事態の解説としてもっとも的確なんじゃないかと思います。
テレフォンショッキングは、テレビの常連以外の人間は出てはいけないコーナーである。だからガチャピンとかはもてはやされるのである。安藤美冬さんはそこはまだ無理。「誰、こいつ?」になる状況に追い込んだフジTVのディレクターは彼女に謝罪すべきである。ネットの流行と実生活の流行は違うよ馬鹿
— 中川淳一郎さん (@unkotaberuno) 2013年3月18日
快著『ウェブはバカと暇人のもの』からすでに述べられていることですが、まったくその通りだと思うんですよ。
- 作者: 中川淳一郎
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では、いいともの客層というのはどういうものなんでしょう。
それを知るには、この記事がわかりやすいと思います。SMAPの香取慎吾がいいともを欠席した日のことを爆笑問題の2人がしゃべったラジオを書き起こした内容です。
田中「昨日観てたら、面白かったんだよ。タモリさんが『月曜レギュラー陣です!』って言って、みんな慎吾ちゃんが出るもんだって用意してるのに、そこに俺が出てきた時の反応(笑)」
太田「『えぇ?!』みたいな」
田中「いいとも始まって初めてだよ。無音で出て行ったの」
太田「ふふ(笑)『……』みたいな感じ?」
田中「『……』ですよ。『慎吾ちゃんは、こんな小さくねぇ』って思うんだろうね。みんな、時間掛かるんですよ、ある程度」
太田「把握するまでな」
田中「『あれ?爆笑問題の田中?』って思って、お客さんもみんな拍手しなきゃいけないっていうのがあるから」
太田「いいともの客は、ちゃんと仕込まれてるからな」
田中「うん。でも、最初は無音ですよ。それから、まばらな拍手があって(笑)」
太田「ふふ(笑)」
田中「もう、いたたまれないんだよ」
いいですか、2010年代ですよ。この2010年代にSMAPを目的に観覧にやって来る客層なんです。
そんな人たちが、たとえNHKの愚にもつかない討論番組に出演した経験があるからといって安藤さんを知っていると思いますか?
おまけに、安藤さんといいともの客層というのは、たぶん世代的にも近い。「争いは、同じレベルの者同士でしか発生しない」というように、世代的に近しい人間であるからこそ、なんでこの女はテレフォンショッキングに出ているんだ?という憎悪が湧いても不思議ではない。うちの母親などはその典型で、「なぜテレビでもてはやされているのかわからない女」に最も敵意を抱く人なのですが、いいともで安藤さんを知ったなら、きっと快くは思わないでしょう。
じゃあ反対に、安藤美冬さんが登場して喜ぶ層というのはどのような層なのでしょう。安藤美冬さん出演で大歓声がおこるテレフォンショッピングとはどんなものなのか。
そんなの、ネット界隈の名だたる好事家のnarumiさん(冒頭のまとめを作成された方です)やhagexさんを客席に100人座らせるくらいしか思いつかないですよ(ちなみにお二人は安藤さんの「サバイバルキット」を購入されているそうです)。
でもそんなの、もはやお昼12時じゃないですよ。ウキウキウォッチングじゃないじゃないですか。
これはどちらが優れているという優劣の問題ではありません。
それくらい、とんでもないミスマッチが起きたということなのです。
これに関して憶測でものをいうのはアレですが、(安藤さん側に最大級に譲歩したものの見方をすると)もしフジテレビ側が「ネットで有名」ということで彼女をキャスティングしたならば、それは仕事が雑すぎますよね。裏を返せば、作り手の方々はネットの空気というもの致命的にわかっていない。
でも、それにしたってノコノコおびき寄せられた安藤さんも安藤さんです。
結局彼女が何をしに出てきたのかが、さっぱりわからない。いや、表面的にはタモさんとのおしゃべりでしょうが、その裏には自己(事故?)PRとノマドPRという目的が見え見えです。
けれど、自分をノマドワーカーとして、ノマドであるということを前面に押し出してマスメディアに出演することは、果たして得策なのか?
そもそも、マスメディアをとおして広めるということは、ノマドという生き方(とそれを可能にした状況)に、もっとも反していると思うわけです。
だって、「テレビに出て有名にならなければ成り立たない生き方」を、マスメディアを通して広めているということになるからです。それってもはやタレントと同じじゃないでしょうか。
けれど、昨今もてはやされているノマドっていうのは、そういうものじゃないですよね。誰だって、どこでだって仕事はできるんだよっていう精神が、その根幹にはあったはずです(本当にできるかどうかは別として)。いいともに出てぺちゃくちゃしゃべっている安藤美冬さんは、そこから最も遠い位置にいるように思うのです。
それから、出演したのがお昼のF2層を狙ったいかにもな番組というのも、バブリーなPR会社のノリであまりスマートじゃない。これで血迷ったノマドが激増するんじゃないかと、心配でなりません。
ぼく自身、ノマドワーカーに対しては何の感情もありません。それは個人の趣味の問題であって、スタバでMacを叩きたいのなら、知らねーよ勝手にしろよっていう話なんです。
ただ一点いいたいのは、ノマドワークではなくノマドワークを世に広めたいという「伝道者」の方々は、総じてダメダメだということなのでした。