いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】ちゃんと伝える 50点

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病魔をきっかけに、父親と息子との間にあった確執が解消されていく様を描いた家族ドラマ。これまた、先日紹介した『気球クラブ、その後』と同様、らしくない園子温監督作。監督の故郷でもある愛知県東三河地区を舞台に、息子を部活の顧問としてシゴキ、また家庭内でも強権的に振る舞っていた父親を奥田瑛二、そんな父親の身体を気づかう主人公の好青年をEXILEAKIRAが演じている。

のっけから、見ていて胸焼けがするような仲睦まじい家族の様子が提示されて、それがすごくうそ臭く感じてしまうし、不気味だ。この人はやっぱり破滅型で、「上手くいっていない家庭」をとらせるほど、その味が出てくるんじゃないだろうか。

その仲睦まじさは展開にも影を落としていて、鑑賞者からしたら息子は冒頭の部分でもうすでに親孝行を十二分すぎるくらいしているようにも見えてしまう。
中高生のときにどんだけグレてんねん、というのだったらわかるが、この子の場合はヤンキーにボコられ補導されたくらいで、基本的には従順に父親が顧問をする部活に出ていたのだから、その謗りは当たらない。
主人公が成長する分岐点がないから、ストーリーとしても非常に退屈。


主人公自身が父親よりもっと重いガンを患っていて、もう親孝行できる時間がかぎられているという事情があるのだが、それにしても息子が父親の亡くなったあとのしでかしたアレはなんなんだ。ネクロフぃ……なんといえばいいのだろうか? 仮に“ネクロフィッシング”と呼ぼうか……、主人公がある衝撃的な行動に出るのだが、あそこまで父親との約束に固執すると、かえって自分勝手にすら見えてくる。


エンドロールである意味監督の個人的な映画ということが示されるが、それゆえなのか、つくづく共感しがたい作品になってしまっている。