『ヤング≒アダルト』、『JUNO/ジュノ』、("オレの映画"こと)『マイレージ、マイライフ』のジェイソン・ライトマン待望の新作。
夫と別れて失意の中にいる母アデルと、彼女を支えようとひたむきに頑張る息子ヘンリーと、逃走中の脱獄犯との交流を描いたドラマ。
ケイト・ウィンスレットが、バツイチ✕メンヘラというこの上なく適役な母親役を熱演しているが、ぼくはそれ以上に今作では、脱獄犯フランクに"リアルハルク"みたいな外見のジョシュ・ブローリンがキャスティングされたことが、成功の決めてだったと思う。
次第に打ち解けていくうちに、彼は母子家庭にとって父親の代替物へとなっていく。
しかしそれはただの代替物ではない。「強くて優しくてなんでも知っているパパ」という、われわれが幼少期に感じた父親への全能感の再現なのだ。彼の初登場シーンの撮り方が示唆的だが、ヘンリーはスーパーマーケットでアメコミヒーローの代わりに"父親"というヒーローを手に入れる。
アデルにとってもフランクは、失われた愛の対象の代替物である。ぼくは、この映画以上にエロティックなピーチパイの調理シーンを見たことがない。次第にフランクに惹かれていくアデルもエロい。
追手が迫る間も、3人の間にはまるで家族のような関係を築かれようとしているが、けど同時に、最良な関係とは言い切れないような"含み"ももたらされる。いわゆる「エディプス三角形」で、ヘンリーはフランクを慕い始めながらも、同時にフランクとアデルのただならぬ男女の関係について、彼の心にはさざなみが立っている。結果的に、その些細なさざなみが、やがて大きな嵐を呼び寄せて3人を引き離す。
わずか5日間でここまで男女が親密になりえるのかや、クライマックスのめでたしめでたし感には「蛇足では?」という指摘のしようもあろうが、そういうことでもいいんじゃないのとも思えてしまう。
一方で、ぼくがこの監督に求めているものとは、また別のジャンルだったなぁという気がするのである。
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