いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】レヴェナント: 蘇えりし者


「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」につづきアカデミー監督賞を2年連続で受賞したアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の最新作。西部開拓時代に実在した罠漁師、ヒュー・グラスのエピソードをもとにした作品です。観る方もハードですが、たぶん演じた方も相当ハードだったのではないかと想像できます。主演のディカプリオはオスカーに輝きましたが、ここまでやったら文句ないだろうという壮絶なものでした。

ストーリーはとてもわかりやすい、復讐劇です。けれど、まずなにより絵作りに圧倒されます。冒頭から残酷な殺し合いが勃発するのですが、その模様を観客はいわゆる「神の視点」、俯瞰できる位置からは一度も見せてもらえません。するとどうなるかというと、観客にも登場人物と同様にどこから敵が襲ってくるのかわからない!怖い!となるのです。おそらく、これをIMAX3Dで観られたら、臨場感もすごいものだったことでしょう(←つまり見る機会を逸した)。

観終えてみると、観客に「神の視点」が付託される場面はほとんどありません。カメラは常に登場人物の傍らから事態を映します。だから、どこかドキュメンタリーのような錯覚も覚えます。けれど、実際に映されるのはドキュメンタリーではありえない壮絶な体験の連続なのですから、面白くないわけがありません。特に、ディカプリオとある生き物の「決闘」には息を飲むものがある。今のところ、ぼくの中では「年間ベストバウト」です。

俯瞰する視点の排除はもうひとつ、物語的な意味もあるのではないでしょうか。劇中、カメラと登場人物より上には常に君臨し続けるものがあります。それは自然です。自然のもとでは、動物も人間も、入植者も先住民族も、親も子どももみな平等に映る。どんなに殺し合いをしていても、ともにいつかは土に還るという意味では同じ――そんな深層の意味を感じてしまいます。だから、今回敵役はトム・ハーディも、取り返しのつかないことをするエゴイストなのですが、彼の悪だけ取り上げ憎めないような気もするのです。
 
「バードマン」にも感じますが、クライマックスで観客は感情をどこにもっていけばいいかわからない、独特の浮遊感を味わいます。その浮遊感も含め、この重厚な作品が忘れがたいものにしています。