いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】ズートピア

動物が肉食、草食別け隔てなく暮らす世界を舞台にしたディズニー最新作です。

タイトルの「ズートピア」は主人公のうさぎ、ジュディが警察官として活躍することを夢見る都市。そこは、誰もが何にでもなれるという理念のもと、さまざまな動物が集い暮らしています。「さまざまな種が集う」という状況、そして「誰もが何にでもなれる」という理念(通常、なんとかドリームと呼ばれます)から、いま大統領選が騒がしいあの実験国家がモチーフであることが明らかです。

「誰もが何にでもなれる」をつきつめれば、それは「人(動物)は見た目だけでは判断できない」ということに辿り着く。ディズニー(&ピクサー)作品の脚本にはいつも計算され尽くしたような数学的な美しさがありますが、今回は一級品といえ、この作品は「人(動物)は見た目だけでは判断できない」ということをほぼ全編で、細かいギャグからストーリーの根幹まで、さまざまな形で訴えかけてくるのです。


ストーリーが進むにつれ、先に観客が見せられていたものがあとから効いてくることがわかる。たとえば、冒頭では、肉食と草食が本能を超えて共生しているというアニメーションでは一見ありふれているはずの設定を、なぜか噛んで含めるようにあらためて説明しているのですが、これも後々意味があったことが理解できます。

脚本だけでなく、ディズニー作品は「視覚的に楽しい」「自分も訪れてみたくなる世界」であることも相変わらずです。ジュディはズートピアに"上京"するシーンが、Amiによる主題歌が流れるオープニングタイトルになっていますが、そこで「ズートピア」のさまざまな場所が初めて映ります。ジュディはそこで「うわあ……」とすっかり魅了されているのですが、きっと観客のぼくらのほうもジュディと同じ顔になっていたはずです。

「人(動物)は見た目だけでは判断できない」――ともすればそれは相手に対する不信を招きます。見た目で判断できないとしたら、いったいぼくたちは何をもって他者(この映画の場合、他"人"とかけないのがめんどくさい……)とつながりを持てばいいのか。何を導き手に他者と共生すればいいのか。
この映画の結論はありふれていて、理想論ではあるけれど、それでも忘れてはならない理念を教えてくれます。そしてその理念は例の実験国家だけでなく、ぼくらが普遍的にもっておくべきものなのです。