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フィリップ・K・ディックの「報酬」を原作としたジョン・ウー監督、ベン・アフレック主演の近未来SF。
ベン・アフレックはのちに監督作で立て続けに秀作を撮り、「アルゴ」でついにアカデミー作品賞に輝きましたが、本作はそんな彼の暗黒時代を象徴する一作に思えます。
まず、原作は未読ですが設定に無理があると思うのです。主人公の役柄はフリーのエンジニアですが、作ったものは企業側の機密情報とのことで毎回仕事に従事した期間の記憶がぜんぶ消されてしまうのです。どんなディストピアだと。人権侵害も甚だしいと。
そんなエンジニアのジャックさんですが、一生遊んで暮らせるほどの報酬と引き換えに3年間にわたってあるマシーンの開発に従事する。3年後、記憶を消された彼は報酬を受け取りに行きますが、なんと全ては引き落とされ、預けていた荷物も別のものに変えられていたのです。しかもそれらの作業は彼自身によるものだとわかるのです。
こう書くと面白い立ち上がりのように思えますが、観ていても中々感情は盛り上がってこない。それは、ジョン・ウー監督に近未来SF的な感性や、あるいはそうした世界観への愛情が感じられないのですね。
ぼくは、ジョン・ウー監督といえば「男たちの挽歌」や「フェイス/オフ」などでみられるような銃、あるいは銃を構える男へのこだわりです。
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とくに、銃をかまえたふたりの男の描写には偏執狂的なこだわりが垣間見えます。本作でも、男ふたりが近距離で互いに相手の顔に銃を突きつける場面が2度もあります。ガンアクションものならともかく、SF映画でこれははっきりいって不自然でしょう。
本作についてネットで、ジョン・ウーにしては暴力描写が少ないとの評を観ましたが、本質的にはジョン・ウーは銃を構える男を撮るのが好きなのが見え見えです。そのぶん、本来は作品のキモになるはずのSF的なギミックに対するこだわりがあまり伝わってこない。結果的に本作は、SFファンにも、そしておそらく監督自身にも愛されないようなかわいそうな作品になった印象です。