「コロニア」は、1973年に社会主義政権下のチリで起きた反共派の軍事クーデターに巻き込まれた男女を描いています。エマ・ワトソン、ダニエル・ブリュールが共演。
ちょっと入り組んだ構造の映画です。発端は軍事クーデターで、この事件はまたそれで1本映画が撮れそうで、事実、ユーロスペースで当時のドキュメンタリが公開中です。
ただし、本作の「主戦場」は、そのクーデターを仕掛けた軍部による拷問に手を貸していた実在のカルト集団「コロニア・ディグニダ」です。映画の宣伝ではそのカルト集団の首領を「ナチスの残党」と評し、妙に推していますが、あまり「ナチス」を意識しすぎると本編を観て混乱するかも。
ストーリーはフィクションですが、クーデターもコロニア・ディグニダも史実に基づいています。そのため堅い映画のように見えますが、とてもエンタテイメント性が高いです。ブリュール演じる青年は、大統領支持派の運動に参加し、ポスターを制作している。エマは、クーデターで囚われの身になってしまった彼を救うため、わざわざ虎穴に潜入するおっとこ前なCAを演じています。エマは神を信じる修道女を装い、コロニアに入る。一種の潜入ミッションと言えます。
このコロニア・ディグニダというのが、なかなか狂った集団です。キリスト教原理主義のエッセンスが入っており、姦淫を固く禁じ、男女は別々の集落で暮らします。でも、内実は男尊女卑で、いうことを聞かない女はすぐに淫乱だ!悪魔がとり憑いてる!とかなんとか無茶苦茶な理由をつけられボッコボコです。
ただでさえ男女は別々。どこにいるかもままならなかったふたりが、身分を隠しながらようやく束の間の再会を遂げるシーンは、意外なほどジーンと来てしまいました。
史実に基づきつつも意外とエンタメ入っている作品といえば、われらがベン・アフレック監督・主演の「アルゴ」を思い出します。クライマックスの空港シーンなど状況からしてクリソツですから、もしかしたらインスパイアを受けているかもしれません。
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