- 作者: 奥浩哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/05/23
- メディア: Kindle版
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家族からは疎まれ、会社でも居場所がない平凡なサラリーマン、犬屋敷壱郎は念願のマイホームを手に入れた。しかし、そんなことで状況は一変などすることもない。そんな毎日に悲嘆に暮れて公園を訪れたところ、彼は謎のまばゆい光に包まれる。目を覚まして自宅にいた壱郎だったが、彼の体にはとある異変が起きていた……。
奥浩哉による新作マンガ『いぬやしき』は、若者たちが主な主人公となる『GANTZ』からは打って変わって、さえない初老のおっさんが主人公だ。
おっさんが主人公でもSFはSFだ。精巧なメカニック描写は相変わらずだが、ストーリーの方は『GANTZ』のように謎が謎を呼び、さらにその上に謎をかぶせるものではない。
ストーリーの骨格がはっきりしている。それは「人を助けることによって生を実感する」壱郎と、対極にあるもうひとりの「人を傷つけることによって生を実感する」人物のふたりが軸として存在するからだろう。
そのふたりのうち、この作品の魅力は後者ではなく明らかに前者だ。一見非力でどうしようもないヘタレの壱郎が、ヘタレながらもなんだかんだDQNや893をボッコボコにしていくさまには、『GANTZ』にない古典的な痛快さがある。
ゲスい勘ぐりかも知れないが、読んでいてありありと伝わるのは、実写化してもらうことを見越しているような雰囲気だ。なにより、実写化したいギミックがいっぱい詰まっている。
人の体が開いて中から機械が見える、非力な老人が大男をなぎ倒すなど、いかにもVFX向きではないか。
とくにぼくが大好きなのは、以下のシーン。893に蜂の巣にされているある人物なのであるが、本編の興をそぐのであえてモザイクにしておく。
こんなシーンが実写化されたら、面白すぎる。
もし実写化するなら、当代一のへなちょこおじさん俳優の温水洋一か、笹野高史にぜひとも演じていただきたい。