周回遅れもいいところだが、いま原泰久『キングダム』を読んでいる。まだたった4巻だが、すでにハマりかけている。おもしれえ。
- 作者: 原泰久
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/06/22
- メディア: Kindle版
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中国の春秋戦国時代を舞台に、信という少年が主人公だ。彼は身分制度の中にすら入れてもらえない下僕で、正真正銘何ももっていない。けれど、にもかかわらず、「武功により天下の大将軍になる」というバカみたいに大きな夢を抱いている。
アクションマンガではあるけれど、バトル描写はわりとオーソドックスでとりたてて特徴があるわけではない。不思議なことに読んでいて血沸き肉踊るのは、バトルに至るまでの会話のプロセスだったりする。こんなことは、あまりアクションマンガではないのではないか?
なぜ会話のパートが面白いのか考えると、たぶん「何も持たない者」が「正統」や「王道」といったものに喧嘩を売る構図は、普遍的におもしろいんだろう。このマンガはその面白さの"核"みたいなものを、バトルよりも人物描写で描いているのだと思う。
下僕の信にとって、身分は厳然とした障壁として存在する。けれど、生まれた身分が悪かったと嘆いてもしかたない。それではどうするか――他の人よりも不利で、リスクをとらなければならないが、勝負に出るしかないではないか。そういう清々しく潔い価値観がこの作品には通底している。
作中では信が、追い込まれた秦国・第31代目の王である政(この人物も「正統」ではないとして排除された身だ)と共闘することになる。ただそれは、忠義を尽くす部下というより、王の命と引き換えに身分、財産の保証とのトレードだというのが、またしたたかだ。
身分がなければ財産もない。礼節も知らないが剣だけはある。その腕ひとつでのし上がっていこうとしている者の歩みが、見ていてゾクゾクしてくる。