東南アジアの武術シラットを扱った、インドネシア発のガチ物のアクション映画「ザ・レイド」の続編。前作で”恐怖のタワマン“を生き延びた警察特殊部隊SWATラマであったが、そんな彼に潜入ミッションが舞い込む。最初は拒否するラマだったが、肉親を殺害された怒りから、再び“殺し合いの螺旋”の中に舞い戻っていく。
より上へより上へ登っていくだけという、ファミコン「スーパードンキーコング」ばりにシンプルな前回からすると、大幅に"ややこしく“なっている。なんせ描くのは、インドネシアを牛耳る二大マフィアと、そこに入り込もうとする新興勢力による三つ巴で、心理劇的な様相も呈してきている。
アクションは相変わらずに壮絶で、『マッハ!!!!!!!!』からこっちの「映画ちゃいますやん。ホントに殴ってますやん」感がビンビン伝わってくる。骨折ってる人も一人や二人じゃないんじゃないだろうか。あと、この映画の格闘の特徴としては、机の側面を使うところね。あの細くて固いところにガツーンと肉体をぶつける。車のオフセット衝突みたいなもんだから、見ていて「うっ」てなる。
シラット独特の高速手遊びのような動きは、やはり一見の価値がある。個人的な注目ポイントは、独房での「高速壁ドン」と、後部座席での攻防だろう。とにかく今作では狭いところでもめちゃくちゃハードにやり合っている。あと格闘ではないが、鉄板でのお肉焼きすぎぃ!と焼き肉奉行なみにツッコみたくなるシーンも、要注目。
前作同様ラマの敵役の多くが魅力的なのだが、今回はバリエーションも豊富で、大人になった妄想代理人くん+両手に金槌を持ったニセ菜々緒戦や、
実質ラスボスのニセマニー・パッキャオのカマおじさん戦など、たまらんギミックが満載。
前作ファンとして、印象的だったマッドドッグ「復活」については喜ぶべきところなのだけれど、あの件をじっくり描き過ぎている嫌いもある。全体的にもう少しタイトにできなかっただろうか。
また、主人公の動機であり、「高速壁ドン」でせっかく表現した「怒り」も、実は別の人間によってとどめが刺されているわけで、その点はすっきりしない。
それから最後に、観た誰もが思うことだろうが、日本のヤクザについては完全なるモブキャラであり、あまり期待しない方がいいだろう。日本版ポスターは完全に誇大広告。
ただ救いがあるとすれば、ラマと松田龍平の最後の会話を“あえて”消されていることだろう。あの演出はよかった。