個人的にはもはやパロディの方が親近感がわく、いわずと知れた元ネタの松田優作主演の角川映画。
MOVIE 12/UNICORN TOUR 2009 蘇える勤労 [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: KRE
- 発売日: 2009/07/22
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昼は平凡なサラリーマン、夜は悪時に手を染めるダーティヒーロー、という二つの顔を持つ男の話。
色々言いたいことはあるのだが、何よりも声を大にして言いたいのは、主人公が何をしたいのかさっぱりわからない。
ストーリーは、銀行の現金輸送車を襲って1億円を強奪するところから始まるのだが、そんな大金を奪う犯罪をやってのけながら、彼は私腹を肥やす上司をみて、自分も社内でのし上がっていく野望をたぎらせるのだ。え、進む道を間違えてね?
もちろん、社長令嬢をものにするという目的設定は申し訳程度になされているのだけど、この令嬢の存在感が空気に近く、また、株をせしめて会社の実権を握った時点で彼女と結婚する意味はない。風吹ジュンに刺されるための動機作りにすぎず、矛盾だらけだ。
これは、ストーリーが雑ということでもある。先日は『人間の証明』をみたのだが、そのときと似ているのは、別に関係のない複数の事件を、さも関係あるかのようにあつかうことで、ぐしゃぐしゃになってしまうのだ。ジョー山中が刺殺された事件と岩城滉一のひき逃げ事件は、容疑者が親子ということにすぎず、実は別の話なのだ。
昼の顔と夜の顔という設定も、ぜんぜん上手くいっていない。だって松田優作、昼間の場面でもめちゃくちゃドスが効いた声出してんだもん。
一番首を傾げたのは、社命で殺人を請け負うという場面で、ボクシングが上手いといってるヤツに拳銃渡すバカもいるのだがそれはともかく、部下がボクシングの実力者だからといって殺人を教唆してくるかは、まったく作品の都合でしかない。あの場面は「夜の顔」として経営陣に接近し、殺人を請け負う算段をとればよかっただけではないか、と思った。観る前は「お、これが特命係長の元ネタか」と思ったが、そんなことはない。特命係長の方が全然上手くいっている。
アクションの撮り方がしょっぱいということを鑑みても、松田優作がカッコいいといわれるのはわかる。
ただ、そこから考えるにいたったのは、一連の角川映画(といってもまだ3作しか観ていないが)の功罪だ。
つまり、一連のシリーズはフォトジェニックな登場人物がすべてなのだ。観客は当時のスターの登場で一定の満足感を得て帰るのだろうが、一方でストーリーのレベルは低く、後世の人がみたらポカンとなる映画になっているのではないか。
この仮説を確かめるべく、もうすこし角川映画を観ていくことにする。