発売中のテレビブロスで、公開中の映画『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』に出演するソー役のクリス・へムズワーズと、ソーの弟ロキ役のトム・ヒドルストンが2人でインタビューに答えている。
http://m.youtube.com/watch?v=5au0eAxyj1k&desktop_uri=%2Fwatch%3Fv%3D5au0eAxyj1k:Movie
ぼくはこの記事で知ったのだが、ヒドルストンは第一作のときのオーディションを、当初ソー役で受けていたそうだ。その際に、ロキ役をやらないか?と声をかけられ、受諾したという。
これが興味深いのは、第一作は、王位を継承するソーをロキが妬む話だからで、まさに「ソーになりたかったロキ」の話なのだ。そういう点で、キャスティングが本編をなぞらえているようにさえみえる。
多くの人が知るように、彼らはその第一作『マイティ・ソー』で大ブレークし、大作『アベンジャーズ』でも重要な役割を担っている。いまや2人にとってソーとロキは代名詞である。本編の結末とはことなり、ヒドルストンはロキとして成功した、といえる。
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インタビューでは、容貌がぴったりだと思ってソー役のオーディションを受けた当時の自分を、ヒドルストンが笑い飛ばしていて、それが印象的だった。
奇しくも先ほど、Twitterで当時のオーディション映像を公開しているリンクが流れてきたのだが……。
たしかに、へムズワーズの演じる自由で豪放磊落なソーと、ヒドルストンの演じる繊細でいて兄への嫉妬心を抱くロキが定着したいま、ヒドルストンのソーは想像し難いものがある。
俳優という、自分がどう見られるかを客観視しなければならない仕事でも起きているのだ。これと同じようなことは就活でもきっと起こっているはずだ。
自分がやりたい、自分に合っていると思う仕事と、本当に向いている仕事は、おそらく一致しない。
ならば、一致するよう志望を変えればいいだけではないかと思えるが、「やりたい仕事」とは、その人が「他人からどう見られたいか」という自己実現と強く結びついているため、これがなかなか難しい。
また、自分よりはるかに思い入れが少なそうな奴が、当の仕事に合っていることも、妬ましくあるだろう。それはさながら、無作法で王にふさわしくなさそうな兄ソーが戴冠される様を、苦々しく見つめるロキのように。
もちろん、自分には向いていない、けれどやりたいという仕事にチャレンジし続けるのはその人の勝手である。気が済むまで受ければいいのだ。
けれど、自分には思い入れはないのになんとなく他人よりできてしまう仕事で貢献することも、ありなのではないか。ソーではなく、ロキとして花開いてもいいではないか。
一方、この世には「誰にでもできる仕事」というのも少なくない。それらに従事する人の人間性がすり減っていくのは、低賃金であることの他に、その仕事が自分を向いている/向いていないという判断さえしてくれない、のっぺらぼうの仕事だからなんだと思う。
そうした仕事をするとき、自己実現という願望は、邪魔にしかならないし、かえって深く本人を傷つけるだろう。