いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画表】オンリー・ゴッド(原題:Only God Forgives)

『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督とライアン・ゴズリングが再びタッグを組んだ一作。

タイを舞台に、ムエタイのジムを営む兄弟と、地元警察との間での抗争を描いている。


レフン監督は当初『ヴァルハラ・ライジング』の直後に本作を撮ろうとしていたそうで、なるほどたしかに、雰囲気は『ドライヴ』よりそちらに近い気がする。
全編にわたり、映像はきわめて静的ではあるのだけど、急速に暴力的に染め上がっていき、いつの間にか画面が殺戮に満ちるのはこの映画にも通じる。

表面的なストーリーは難しくない。いわば、復讐劇の連鎖なのである。
けれど、情念に満ちているかといえばそうともいえなくて、振り子の運動のようにそれを淡々で描くいていく様は、北野武が暴力映画でみせる乾いた人間理解に似ている。
どうしてこの監督は、美しくもあり、かつ絶対入り込みたくないような恐ろしい世界を撮れるのだろう。


多くの観客が魅せられると予想できるのは、敵役のウィタヤー・パーンシーガームである。
最初は本当にちょい役なのかと思うぐらい、どこにでもいるおっさんで、オーラもない。
しかし、そのカリスマ性は、スクリーンで彼がおこしていくことで、次第に、でも絶対的に強まっていく。

その上で、子煩悩で、カラオケでの選曲は甘いバラード。なんなんだこのアンバランスさ。

映画の結末には「???」となることは否めないけれど、それでももう一度みたいと思わされてしまうのも事実で、ニコラス・ウィンディング・レフンの名前で上映される映画は、また見に行かなければと思わされるのである。