いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】マラヴィータ


『マラヴィータ』は、監督リュック・ベッソン、製作総指揮にマーティン・スコセッシ、主演にロバート・デ・ニーロトミー・リー・ジョーンズミシェル・ファイファーらが共演という超重量級打線によるブラックコメディだ。スコセッシとデ・ニーロといえば言わずと知れた黄金コンビだが、そこにリュック・ベッソンが加わるとどうなるのかが気になるところである。

デ・ニーロの役どころはニューヨークを牛耳っていたマフィアの元親分フレッドだ。身内を売ったことにより証人保護プログラムが適用され、暗殺者の追手を巻くために家族とともに世界各地を点々としている。トミー・リー・ジョーンズが、豪放磊落な彼に呆れつつも、お目付け役を務めているFBI捜査官スタンスフィールドを演じている。デ・ニーロの一家はさすがおやじがマフィアだということもあり、慣れない南仏・ノルマンディの生活も少々荒っぽい“独自”の処世術によって生き抜いていく。

先述したようにとてつもなく豪華な陣容のため、否が応でも期待してしまう。実際、開始数分は期待させられる出だしなのだが、それ以降は失速ぎみ。『ソプラノズ』的なものを目指したのかもしれないが、なんともぬるいホームコメディとなっている。

バイオレンスにしても、コメディにしても、とにかく中途半端なのである。フレッド一家のストーリーは途中で分岐し、母親のパートと長女のパート、長男のパートなどと同時並行的に描かれ、それが最後に大団円となるのだが、この3つがとにかくどうでもよくて、心理的に入り込めない。特に長女の恋愛については、心底どうでもいい。

最後の銃撃戦についても、やはり70歳のデ・ニーロにしてみればこれが精一杯か、というところ。


劇中にはスコセッシ=デ・ニーロにとっては『グッドフェローズ』のセルフパロディ(最後の車のテールランプなど)、ないし直接的な言及が何度か挿入される。それらから勘ぐるに、本作はリュック・ベッソンが、あこがれの二人に対して、あこがれの作品の再現を頼んだにすぎないのではないか、とも思ってしまうのである。