いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

人はイケメンの自信があればイケメンだし、ブサメンの自信があればブサメンなのだ


http://anond.hatelabo.jp/20100624224146

男「どうせ女の子はイケメンにしか興味ないんでしょー?」
女「ちがうよー、別に顔なんか関係ないよー、男は中身だって!」


今までこういったやりとりを、人類は幾度となく繰り返してきたのだろうか。


以前、『下流社会』を当てた三浦展の新書、その名も『非モテ!』というのを読んだことがある。タイトルにあるとおり「非モテ」について、「ジェネレーションZ調査」という若い男女約2000名を対象にしたアンケート調査をもとに論じているのだけれど、本書にはこういう箇所がある。

当然だが、モテと容姿には強い相関がある。特に容姿への自信があるかないかはモテ意識にかなり影響する。


文中では、アンケート結果から「容姿に自信がある」という項目と自分がモテているかどうかについての「モテ度」という項目を抽出し、強い相関があるということが明かされる。詳しい結果を知りたい人は本書を手に取ってみてほしい。


僕が興味深く思ったのは、モテと比べられているのが「容姿」ではなく、「容姿に自信がある」かどうかという項目だったことだ。注意深く読むと、これは自分の顔についての自己評価にすぎないのだ。

「容姿」について本当に厳密な調査をするならば、調査員が対象者の容姿を逐一観察し、それぞれに「客観的評価」を下すのがより的確な方法だろう。しかし当たり前だが、技術的、物理的にそれは困難であって、もちろん対象者の顔写真はいっさい本書には掲載されていない。

僕はここで、「容姿に自信がある」に強くチェックを入れたであろう被験者の方々に「ウソこくでねー」と詰め寄りたいわけではない。“自称容姿に自信がある”人々のなかには、客観的にみて、そりゃモテるだろうよという殿方もいるだろう。

だが、やはり僕の興味は“そりゃモテるだろうよという殿方でない殿方”の方に向くのだ。僕は、彼らが見栄を張っているのだとかなんとか言うわけではない。往年の喜劇俳優の故・渥美清みたいな顔面を持つ人物でも、本心から「自信がある」にチェックを入れた人はいる可能性は、捨てきれない。


というのも、自分の容姿というのは、客観的評価がきわめて困難な対象のひとつなのだ。そしてその評価を最終的に下すのは、おそらく容姿とは関係ない、「自信」の有無、もっと言えば自意識なのだ。それは前にもすこし書いた。


つまり、ここでモテ度とともに「容姿に自信がある」として比較されてあるものの内実とは、単に自分に「自信がある」かどうかなのだ。言い方を変えれば、どれだけ自分におめでたいかどうか、ということ。

考えて見てほしい、自分に自信がないやつが、異性にモテるだろうか。自分に肯定的評価を下せない(自分にすらモテない)人間が、他者からモテるだろうか。


ただ、「ただしイケメンに限る」という自虐ネタがあるけれど、この「ただしイケメンに限る」を使い「非モテ」だのなんだのと自己規定する人たちは、「イケメン」だと規定する人とはまた別の種類の自信に満ちあふれている。それは、自分が非モテである、ブサメンであるという自己規定の信憑性への自信だ。


自虐史観ならぬこの自虐“私”観、なぜにそうなったかという原因には諸説あると思うが、この「ただしイケメンに限る」というネタの汎用性の高さもその一つなんじゃないかと思う。ネットに転がる、恋愛への希望にどんなに溢れた言葉であろうと、文末に「ただしイケメンに限る」を付与することでメタにまわる(ツッコミにまわる)ことができる。攻撃されずに攻撃できる場所だ。しかも何回でも何回でも使える。ただしこれは、自信の増長の仕方としては、特に現実の恋愛にコミットするならば、決定的にまちがった増長の仕方だ。


「あの〜二次元で間に合ってますぅ」という人まで僕は巻き込みたいわけじゃない。二次元で満足ならそれでいいのだけれど、二次元もアリけれど三次元にもちょっと未練あるよね〜という人は、この「ただしイケメンに限る」を汎用する恍惚に浸って行動しないうちに、大枠で考えたら大損をこいている、ということもあり得ると思うわけだ。


読者の中には、この記事が最終的に「(もっと素直な)自信を持てよ!そうすればきっとモテるよ!」という今時やっすいモテ本ですら吐かないような、逆に自信が萎えさせるだろうという結論を述べて終わろうとしているのかもしれないと不安を抱いている人もいるかもしれない。

案ずるな、それが結論だ。というより、結局そうとしか言えないのだ。


ただ、これは僕の書いた文章だ。文末に勝手に「ただしイケメンに限る」はつけないでいただきたい。
そのかわりに僕は、こう書き添えて終える。


※この記事は「非モテ」と自己規定している人に向けて書かれています。