いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

山ちゃん結婚で手のひらを返した人たちに捧げる映画『ビッグショット・ダディ』

 

 

 もう1週間が経とうとしているが、南海キャンディーズ山里と女優の蒼井優が結婚したことは衝撃的だった。
 
 SNS上が驚きと祝福コメントであふれかえったが、その一部に違和感を覚えるコメントもあった。

 今回の結婚に際して、これまでの山ちゃんも含めて、彼をまるで聖人君子であるかのように持ち上げるコメントがあったのだ。あの妬み嫉みの芸風の彼をあげて、まるでマザーテレサのように持ち上がるのである。あんなに人格者だから、蒼井さんと結婚できたのだ、と。
 
 その滑稽な状況を目の当たりにしたとき、思い出したのが、今は亡きロビン・ウィリアムズの晩年の映画『ビッグショット・ダディ』である。

 

山ちゃんを急に持ち上げだした人が観るべき『ビッグショット・ダディ』

 ウィリアムズが演じるのは、高校で人気のないポエムの創作コースを担当するしがない教師ランス。小説家になる夢を捨てきれず、中年になった今もひそかに小説を書いては出版社に送り続けている。

 そんな彼は、別れた妻との間にもうけた息子カイルと共に暮らしている。

父が教鞭をとる高校に通うカイルは、学校では嫌われ者で問題を起こしてばかり。退学すら危ぶまれている。
 父親とはロクに口を聞かず、唯一といっていい親友と家でゲームとネットばかり…。

 かといって、カイルが実はいいヤツ…、というわけではなく、父ランスの今の彼女(学校の同僚)と3人の会食したときには、テーブルの下でケータイカメラを使用して彼女のパンチラを撮るのである。サイテーのやつだ。
 
 そんな息子が突然、あっけなく死ぬ。首吊りオナニー中に誤ってそのまま逝ってしまうのだ。

 

サイテーな息子の評価を変えた遺書

 生前もクソだったのに死に方もクソ。ランスはさすがにそれでは息子が惨めすぎると同情し、一つ大きなウソをつくことを決断する。

 カイルが自殺したように装い、遺書をしたため、「オナニー死」を「自殺」に偽装したのである。

 このささやかなウソが予想外の波紋を広げていく。

 それまで、小説の中では花開かなかったランスの文才は、息子の遺書の中で輝きを放ち、ポエティックなその内容が同級生たちの胸を打ったのである。ある学生は生前のカイルが聴いていた音楽に聴き惚れ、ある学生は生前のカイルが毛嫌いしていた彼自身のポートレートをTシャツにして嬉々として着こなし始める。
 
 一枚の遺書によって、学校中の嫌われ者だった彼は、10代のカリスマにまで仕立てあげられたのだ!実際はやっぱりクズだったのに!
 さわぎは学校を超えて、社会現象へと発展。ランスにも制御できなくなっていく…。

 映画は、一枚の遺書で、1人の人間の評価があっけなく変わっていく様を滑稽な光景を描いていく。

 主人公と共になんだかなあという思いで観ていた鑑賞者の胸のすくような開放感なクライマックスは是非、Amazon Primeなどであなた自身の目で確認してもらいたい。


 ここまで書けばもう大概の人には、何が言いたいか分かってもらえるだろう。本作のカイルの身に起こったことと、山ちゃんの身に起こったとったことが似ているのだ。
 もちろん山ちゃんは死んではいないが、映画で一枚の遺書がカイルの評価を変えたのと同じように、今回は一枚の婚姻届が、山ちゃんの人格的評価を一変させたのだ。人の中身は全く変わっていないのに。
 英語圏には、社会的に高い地位を獲得した男が、その象徴として手に入れる美しい妻のことを「トロフィーワイフ」という言葉がある。今回はまさに、「トロフィー」を手に入れたからこそその人が偉いのだと錯覚する現象が起きている。

 山ちゃん自身はきっと何も変わっていない。きっと、ゴシップ好きで、下世話で、僻みっぽく、それでいて涙もろくてクソ真面目で、そしてきっといいやつなのである。結婚なんかでそれは変わりはしないのである。