いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】フォーカス


天才詐欺師のニッキーは、スリのプロ集団のリーダーだ。大きな山を前に美人スリ師のジェスと出会い、恋仲に。しかし、彼女に情が移ることを恐れたニッキーは、ふたりして大仕事をやってのけた直後、泣く泣く彼女の前から去った。そしてその3年後、ふたりは運命的な再会を果たす。彼がF1オーナーの大富豪ガリーガと手を組み仕事をしようとしていた矢先、彼女が現れる。ガリーガの恋人として……。

ウィル・スミス主演のクライム(ラブ)コメディ。彼といえば、近年では実の息子と共演した「アフター・アース」があったが、これがまあ死ぬほどつまらなかった。そのため、この映画もたいして期待せずにみたのだが、その思いは良い意味で裏切られる。スタイリッシュで、オチもそこそこの切れ味があるいい映画である。で、終わったあとに監督と脚本を確認すると、あの「ラブ・アゲイン」を手がけたグレン・フィカーラジョン・レクアである。そりゃ面白くなるはずだ。

スミスが演じたニッキーが率いるスリ集団というのが面白く、一種のサークルのような組織体系なのだ。犯行時には、ターゲットの気をそらす人、犯行をする人、奪った金品を輸送する人、売りさばく人…などなど、きめ細かに分業されている。ただ、この設定は、映画後半ではとくに活かされることなく終わるのだが。

中盤と終盤にひとつずつ大きな山があって、観客を飽きさせない。終盤の大オチもなかなかいいのだが、ぼく個人的には中盤で出てくる中国の大富豪なるやつが妙に印象に残った。

彼はひょんなきっかけから、ニッキーとさまざまなことを対象に賭けで対戦するのだが、ぶっちゃけてしまえば男と男による「チ✕コの大きさ比べ」みたいな場面である。度胸比べだ。
ニッキーと対戦するこの男がかなーりの食わせ物で、言うならば「ハスラー」(勝負事で最初はあえて弱いふりをして相手を気分よくさせ、そのあとで大金を巻き上げるプレイヤー)である。こいつの罠にまんまとニッキーがハマってしまい、「え、どうなんの!? どうなんの!?」となかなかハラハラさせられる。ここの見せ方はかなりうまい。

見せ方といえば、ひとつ面白いと思ったのは、クライマックス前にある人物の行動を定点で追っていく試みがなされている。その人物が主人公なら極めてふつうの描き方だが、この映画ではかなりモブな登場人物に対してそれをやっていて、しかもその技法は、クライマックスへのつなぎとして非常に意味があるのである。

クライマックスにかけては、逆転につぐ逆転、敵が味方で味方が敵で、という激しいオセロの試合のような反転が連続で、手に汗握るものがある。惜しむらくはニッキーのキャラが弱いことだ。ここまで書いてきたように、ぼくはかなり評価しているが、反面ウィル・スミスの代表作というより、単に「面白い映画」で終わってしまいそう。未だにぼくの中ではMIBでの彼の方がよっぽど印象が強い。