いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【キングオブコント2021】好きだったネタBEST3【優しい世界】

キングオブコント20201』は審査員の新陳代謝が大成功し、なおかつ近年まれに見る高いレベルでの戦いで、満足度が高かった。今日は、個人的に好きだったネタ3つについて書きたい。

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うるとらブギーズ

蛙亭ジェラードンと強烈なキャラクターが持ち味のネタが続き、3番目の男性ブランコ入れ子構造の知能指数の高いコントを見せつけ、4組目に登場したうるとらブギーズが繰り広げたのは、練りに練られたシチュエーションコントだった。

迷子センターに大慌てでやってきて、はぐれた愛する3歳のわが子の特徴を早口でまくしたてるお父さん(佐々木崇博)。その特徴がありえないほど奇妙キテレツで…という面白さで一山作るのだけど、折り返した後半、今度は館内放送でアナウンスする係の男(八木崇)がある意味で主役になる。

彼はありえない子どもの特徴をまじめにアナウンスしなければならないが、面白すぎてそれができないのだ。まさに「緊張と緩和」というお笑いの法則。努めて平静を装ってアナウンスしようとするも、無言になったり声が裏返ったりする八木の姿が爆笑を生んでいく。これが面白いのは、前半で「子どもの異常な特徴」が視聴者の脳に十分に浸透していたからだろう。想像力豊かな視聴者は、さらに3歳児の異常な特徴を伝える異常なアナウンスが流れている(どこかは分からないけど)館内の図も絵に浮かんで、余計おかしい。

二度も三度もおいしいコント。審査員の小峠も導入自体はよくあるパターンだったが、そのあとの展開について指摘して「見たことない」と絶賛していたけども、そのとおりだと思う。情景が浮かぶ、奥行きの広い笑いだったと感じた。

ニッポンの社長

そのすぐ次の5番手で出てきたニッポンの社長のコントも好きだ…。個人的には今大会で一番好きかもしれない。

バッティングセンターで黙々とバッティングに励む高校生(辻)。それを傍らから眺める全身くすんだ色をしたおっさん(ケツ)。

ケツの“関西のおじさん”感が、もうこの時点でちょっとおもしろいのだけど、そのあとの意表を突く少しバイオレンスで、少しマゾヒスティックでもある展開が素晴らしい。ボールが肉体や頭蓋に当たる際のリアルな鈍い音、そしてそれと連動するケツの仕草も見事。最後の方の狂気的な展開もたまらなく好み。

構造が単線的で、またオチが弱いと見る向きもあり、それゆえに十分に評価されなかったけれど、たとえば、夜寝る前にふと思い出して吹き出してしまいそうになる、「尾を引く笑い」を生むコントだと思う。

ザ・マミィ(1stラウンド)

1stラウンド8組目に登場したザ・マミィのコントは、“街のヤバいおじさん”というよくある導入。酒井貴士扮するやや舌っ足らずなおっさんの「リアリティ」が光るのだが、そのヤバいおじさんをさらにヤバい狂気が強襲し、ツッコミに回らせてしまう展開が斬新だった。

ヤバい(はずの)おじさんの「偏見とかないの!?」「俺2、30年ぶりだぞ人と話したの」「もっと人を選べよ、俺はまだわずかに自我が残ってたからいいけど、もう完全にそうでないやつもいるからね」という、今のテレビではおそらくぎりっぎりなパワーワードもことごとく当たっていく。

自分で自分を貶めるツッコミをしてしまう、つい我に返って落ち込むおじさんなのだけど、最後はハートウォーミングなのか何なのか分からないミュージカルで締めてインパクトしかなかった。

 

昨日、大会後に友達としゃべっていて言われて気づいたけど、今年のネタはとにかくハートウォーミングというか、(少なくとも登場人物にとっては)グッドエンドなネタが多かった印象。コントの大会にも優しい笑いが降り注ぐ。そういう時代なのかもしれない。