これは親譲りなのか何なのかは分からないが、結構老けにくいタイプだと思う。
父親は早死だったのでよく分からないが、そろそろ60代の母親もよく「若い」と言われるので、比較的若いのだろう。そういう遺伝子を半分は受け継いでいるようだ。
自分自身でもこの歳にしては若いと思っていたのだが、先日、「年をとった」と自覚することがあった。
友人と思いがけず、ビデオ通話をしていたときである。
その友達は以前長髪だったが、スマホ画面の中の彼は、自粛期間中にいつのまにか坊主頭になっていた。
ビデオ通話をしていて、ふと気になることがあった。
画面の中でしゃべっている彼の頭部、前頭葉の部分とそれ以外の部分の色あいに、薄っすらとだが確実にセパレートがあることに気づいたのである。
おそらくこれは、坊主頭の薄い部分と濃い部分のセパレートである。あばれる君の頭部で確認できる、あれ、である。
つまり、このセパレートは友人の前頭葉の部分の毛根が死滅しかけていることを意味する。もうそれは虫の息という有様だ。そう、この友達は薄毛になり始めているのだった。
このことがぼくにとって驚きだった。
人はいつかハゲる。それは分かっている。しかし、自分は以前、毛根は元気だし、今のところは大丈夫だ。友人の薄毛によって、自分は「いつハゲてもおかしくない世代」になったことを初めて体感を持って気づいてしまったのだ。彼がぼくより3つか4つほど年下、ということも、その衝撃度を上積みする。
薄毛になっていることを通話ですぐに本人に伝えると、友人自身は薄毛の覚悟はとっくにできていたらしく、反応は鈍かった。そのこともかえって印象的だった。
この先、こんな風にどんどん周囲の人間の「老い」を気づき、年をとったことを自覚していくのだろうと思うと、怖いようで、ワクワクもしている。
ハゲた、チン毛に白髪が生えた、わりと笑えない重い病気になった、「おじいちゃん朝ごはんはさっき食べたでしょ」になった、死んだ、などなど。続々と周囲は変化していくのだろう。
おそらくぼくは、周囲の人間全員の「死んだ」報告を聞くことになると思う。
なぜなら、以前にも書いたとおりぼくは150歳まで生きるのが人生の目標だからだ。
長く生きるのは、森羅万象をより長く「見たい」ためだ。第3次世界大戦を目撃したいし、義体化した人類が100mで3秒台を叩き出すのも見たいし、火星へのテラフォーミング計画が成功した光景も見ていたいのだ。
とにかく、全部見たい。
だからとりあえず150歳までは生きるつもりだ。
もっとも、こう書いているぼくの体内で息を潜めている恐るべき病巣がゆっくりと膨張している可能性もあるのだが。
健康診断、行こ…。