いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

年明け早々に目撃した「お笑いリンチ」について

不思議なもので「年明け」というともうけっこう前に思えてしまうのが、三が日に「ちょっとこれはどうなんだろう?」という番組がありました。それはある特番だったのですが、そこに「辛口お笑いライター」(本人の名誉のために匿名)との触れ込みでブロガーを登場させる場面がありました。

太田光をキレさせたブロガー

なんでもそのブロガー、過去に爆笑問題の漫才を酷評し、太田光をキレさせた逸材とのこと。まあ、太田さんもマジじゃないでしょうし、マジだとしてもその怒りはあるところまでいくと愛に変わってしまうような人なので、純粋に憎悪だけで名前を出したわけではないと思いますが、とりあえずそうした曰くのあるブロガーです。

そうした触れ込みで、いざブロガーがスタジオに登場しました。ブロガーが癖のあるキャラクター(しかもそれは愛着がわくような類でない癖)であったことは否めませんが、それ以上に気になったのは、番組としてのそのブロガーの扱いです。

「珍獣」扱いする方向性

文章を書き慣れたブロガーとて、テレビ出演はほとんど初めてのはず。
ところが、スタジオはまるで「珍獣」でもやってきたかのように、そのブロガーをイジり倒すのですね。そのブロガー自体がいちびっていた(関西方面の言葉でふざけていた)ので擁護できないところもありますが、それにしてもあれは人によってはけっこう堪えるはずです。
唯一、博多大吉さんだけはブログで批評する行為に対しては擁護するような発言をしていましたが、他の共演者からブロガーに歩み寄ろうとする気配は一切ないのですね。
SE(サウンドエフェクト)にも悪意があった。他の出演者がしゃべっているのには笑い声がつきますが、ブロガーがしゃべっているときには付けなかったり、くすくす笑いだったりする。それだと否が応でも、ブロガーの発言だけズレたように感じられる。あんなのお笑いリンチですよ。


なにより、最も問題があると感じたのはそのブロガーが普段書いている内容については、ほとんど言及されないのです。なにも、そのブロガーの書く内容が優れているとかそういうことは思いませんが、せめてその内容についてもっと触れてあげればいいのに。おまけに、出演者らについて批評するという体で「フリップ芸」までやらされる。
まるで「そんなにお笑いが批評できるなら、自分でテレビに出たらさぞ面白いことが言えるんだろうね?」と言わんばかり。そしてそのことをエクスキューズにした「お笑いリンチ」でした。

批評家に「じゃあやってみろ」という野暮

しかし批評家に対して、「じゃあ自分でやってみろ」というのは野暮であります。かの辛口お笑いブロガー、高橋維新さんは、かつて太田さんに自分で漫才をやってみろと言われた際、以下のように反論しています。

「そんなに言うならお前がやってみろ」というのは、プロが言ってはいけない反論だと考えています。
 素人は、「お前がやってみろ」と言われても、できないことは十全に分かっています。できないからこそ、できるであろうプロにお金を払って頼むのです。

爆笑問題・太田さんへの反論 - 高橋維新のページ

普段、高橋先生のブログには共感成分がほとんど見いだせませんが、この点に関しては全くごもっともだと思います。
あの番組は、ブロガーをテレビのバラエティ番組に引っ張り出してきて、タレントと同じ目線での振る舞いを要求する、まさに「やってみろ」を実践したものでしかないのです。

「自分でできもしないのに」の怖さ

あの番組を見て複雑な気持ちにあったのは、たぶんぼくもそのブロガーと大して変わらないからでしょう。
ぼくのような泡沫ブロガーがテレビに呼ばれるようなことは万に一つもありませんが、それでも、あのようにブロガーがテレビにおびき寄せられて「お笑いリンチ」を食らっているのを目の当たりにすると、自分と重ねてしまうところがありますし、あの番組を観て溜飲を下げているような人がいるとすると、気持ちが暗くなるところはあります。

おそらく、あの放送(事故)を観た視聴者100人のうち、ブロガーに好印象をもった人はひとりも見つけられないでしょう。1000人、1万人に聞いても難しいかもしれない。大多数の人の心のなかには、全く生産性のない不快感しか残らなかったはずです。
「コンテンツについて偉そうに語るこういうヤツにかぎって、自分では何もできない」「面白いことはできない」そういう感想は間違っていないでしょう。
けれどそこから、短絡的な人が「だからこいつの言うことは取るに足らない」という”間違った”感想をもつことも十分ありえる。
「自分でできもしないのに偉そうに言っている」実はこう思われることこそが怖いのです。
でもそれは違うんです。テレビについて書くことと、たとえそれを踏まえた上でも、実際にテレビに出ることの間には、まだ千里の径庭があります。

三が日から本当にえげつないものを見せられました。何も年明けに放送しなくてもいいでしょうに。年忘れにひっそりとやってひっそりなかったことにしましょうよと。
番組を作った側は、自己満ブロガーをこてんぱんやっつけて満足かもしれませんが、番組から伝わったのはただただ「大人げない」リンチの手法だけでした。