いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】マイ・インターン

ロバート・デ・ニーロアン・ハサウェイが共演するコメディ映画。ハサウェイ演じる叩き上げのECサイト経営者と、ひょんなきっかけからやってきたデ・ニーロ演じる高齢インターンの交流を描いている。


鑑賞前は、きっとデ・ニーロがいつものように偏屈な頑固親父を演じ、最後はブチギレてモヒカン頭で会社を強襲する…とまでは思わなくとも、きっとハサウェイ演じる若者世代代表と、デ・ニーロ演じる年寄り世代の代表が最初はぶつかりながらも、次第にお互いの個性を認めて埋めあい、ともに成長していく……ぐらいの「ありがち」な筋書きを思い浮かべていた。

ところが、蓋を開けてみれば、そういった内容とは少しちがった。この映画でのデ・ニーロはかつてないほど柔軟で頭がよく、最初から「できる男」なのだ。おそらくであるが、この映画でのデ・ニーロは、現代女性が「理想とする男」や新しい父性のあり方(父性2.0)が反映されているのだと思う。

デ・ニーロはその有能さ、気が利くことからすぐに社長の秘書みたいになる。ハサウェイ演じる女社長は、彼のすこし鬱陶しいぐらいのホスピタリティーに、当初はとまどいを覚えて避けようとするが、次第に彼を理解し、積極的に頼りにし始めていく。


ここで、旧来の映画ならばふたりが恋仲になるところだが、この映画はそんな定番には落ち着かない。ハサウェイにはすでに夫と子どもがおり、デ・ニーロとは「そういう関係」ではないのだ。
かといって、この映画においてのデ・ニーロは、男性性が鳴りを潜めた「おばさんおじさん」のような存在でもない。映画はデ・ニーロに対して、ちゃんと年相応なパートナーをあてがうのである。男性性は失ってほしくはないが、ヒロインとは別のところで処理しておいて、というわけだ。


映画のクライマックスでは、ハサウェイが自身の会社と、自身の家族に関係する重大な決断を迫られる。ここでもデ・ニーロは、適度な「父性」を発揮して彼女にやさしい助言を授けるが、それはあくまでも「彼女自身が下した決断」の後押しにすぎない。主体性はあくまでもハサウェイの役柄に担保されている。

先述したように、この映画はいままでの父性(パパは何でも知っている)とはまた少しちがった父性2.0を描いている。そういう意味では興味深いのだが、そのように「女性が憧れる絶妙な理想像」を描いているゆえに、かゆいところにも手の届くデ・ニーロの人物設定のパラメーターに「人の手が加わった感」がして、作り物めいているのは否めない。こんな完璧なおっさんいないよ。
まあ何にしても、主体的な強い女性に対して、おっさんができることを示してくれているような気はするのであった。