いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

東京国際映画祭の特別企画から漂う広告屋さんの選民意識


30周年を迎えた今年の東京国際映画祭が、特別企画を展開している。「すべての映画はこれより面白い!?」というテーマのもと、CM動画を一般公募するというのだ。応募期間は19日から29日の10日間。
http://cm.tiff-jp.net/



でも、このテーマ、なんか失礼ではないか? 「すべての映画はこれより面白い!?」。ふつうは「すべての映画はこれよりはまし!?」としか読み解けない。この企画は、当然ながら映画祭側がGOサインを出したものであって、いわば国内外の映画を招き入れたホストの側だ。そんな彼らが、上映作品に「これよりまし」、言い換えれば最低限は超えている、とのたまうのである。中々の度胸ではないか。


いちおう、今回の企画意図については、以下のように説明されている。

「すべての映画はこれより面白い」という言葉が皆さんが応募してくださった映像のあとについたとき
「そりゃそうだよな、この映像なら」と、納得するような具合のものでも
「いや、それってかなり難しい注文だぞ!」と、映画関係者がうならせるものでも
とにかく募集してみようかなと思います。
そして、審査員が、いちばん「これだな!」と納得したものを選んで行きたいと思います。
言葉にしづらくてすみません。
それが、高レベルのものなのか、低レベルのものなのか、審査してみるまで私たちもわかりません。
出会いを楽しみにしています。


同上

この文章では一応、応募作品がとんでもない高レベルの方向に振れて、「すべての映画」が「それよりも面白い」となる、という上映作品の立場をたてる可能性も残している。

であるが、きょう、映画館に行ったら偶然、この企画の「お手本?」となるCMが流れていて、ギョッとした。


これらは3本とも、「面白くない」ものを意識し、「そりゃそうだよな」の方に流れていることは明らかだ。ちなみに、不幸にもこれら3本のCMを見せられた場内の観客は、最後の「すべての映画はこれより面白い!?」のスーパーが出てもクスリとも笑っていなかった。あえてつまらないことをして笑いにするのなんてもはやありふれている。

高レベルのものを作るにしても、制作の猶予が10日しかないのである。そんな状況下で「『いや、それってかなり難しい注文だぞ!』と、映画関係者がうならせるもの」が来ると考えているとしたら、それはそれでまたナメられたものである。

こうした状況から、この募集企画は「あえてつまらないものを作る」という方向にシフトすることは避けられないものだ。


しかし、そうした「あえてつまらないものを作る」というコンセプトとは裏腹に、企画全体からは、関わった広告屋の人たちの「俺たち面白いことをしてるだろ?」「奇をてらったことをしてるだろ?」というふてぶてしい態度、言い換えれば選民意識がぷんぷん臭ってくるのは、ぼくだけだろうか?

特設ページでは、大手広告代理店のCMプランナーという御方が、デカデカと顔写真入りでお目見えしている。さぞかしエラい御方なのだろうが、映画祭の主役は映画やその監督、出演者、スタッフである。これだけは絶対に揺るがない。その添え物にすぎないCMの側が、なんでこうもでしゃばり、見方によっては顰蹙を買うことをする必要があるのだろう。ぼくにはちょっと理解できない。


昨年には「ニッポンは、 世界中から尊敬されている映画監督の出身国だった。お忘れなく」という気持ちの悪いキャッチコピーを世界に発信した東京国際映画祭。関係者のみなさま方は、自分たちの言葉が相手にどのように受け取られるかに考えを巡らすことを、お忘れなく。