いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】新宿スワン

金もツテも、生きる目的もなかった男が新宿歌舞伎町で拾われ、スカウトとしてのし上がっていく姿を描く人気漫画の映画化。主人公の白鳥龍彦を綾野剛が演じ、その脇を伊勢谷友介沢尻エリカ山田優山田孝之ら豪華キャストが固める園子温監督の話題作である。

伊勢谷くんかっこいーとか、山田優にしびれるーとか、そりゃこれだけのメンツだからルックとして魅せられるものはあるのだが、いかんせんストーリーが……。第1子が誕生した祝福ムードの中だけに言いたくはないのだけれど、脚本がビミョーというのはもうどうしょうもなく事実なわけで。

本編は、龍彦の所属するスカウト企業バーストと、競合するライバル企業ハーレムの合併騒動と、彼とその因縁の相手である秀吉(山田孝之)の激突の2部構成のような作りだが、どうもそれがいびつなのだ。
原作未読(ただしくは5、6巻ぐらいまで大学時代に読んだがすでに忘却)なためわからないのだが、これを同時に描く必要はあったのだろうか? 原作未読の読者からすれば、別にバーストもハーレムもお馴染みではないのだから、それが合併するといったところで特に感慨はない。スカウトそのものについてもふくめ、そこを丹念に描くべきではなかったか。

また、龍彦と秀吉の因縁にしても、これまた原作未読だからわからないが、もっと丹念に時間をかけて描くべきもので、2時間半の映画の一部に組み込んで観客に伝わるのかといえば、微妙なところである。

龍彦がかかわる風俗嬢として、沢尻と真野恵里菜のふたりが出てくる。が、ここでは「ミリオンダラー・ベイビー」現象が発生している。

ミリオンダラー・ベイビー」現象とは、イーストウッドモーガン・フリーマンのふたりが出ているが、ぶっちゃけひとりでいいだろという現象のことで、沢尻と真野についてもどちらかひとりでよかった気がする。ふたりとも、龍彦の"善意"と裏腹に夜の世界で不幸になってしまう事例なのだけれど、ほとんど同じことの繰り返しなのだ。さらにいえば、真野は死んでしまうが、死に至るまでのプロセスがペラッペラなため、記号的に配置されたキャラクターにしか見えない。

園監督のわりに凄惨な場面がほとんどないのは意外であるが、それ以上に、ぼくは園さんがこの映画についてどう思っているのか、すごく気になる場面もあった。

例えば、龍彦が真虎に拾われるシーン。お腹ペコペコだった彼は、連れて行かれた食堂で白米をかきこむのだが、ほっぺに米粒をつけているのである。なんだその演出!? さらに、秀吉との最後の決闘では、クタクタになったふたりが大の字で突っ伏すのである。往年の不良漫画か! これほどベタな演出をするのは、監督が作品をバカにしているとしか思えないのだが、それは勘ぐりすぎだろうか?