プロ野球復興史 - マッカーサーから長嶋4三振まで (中公新書)
- 作者: 山室寛之
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/04/24
- メディア: 新書
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内容(「BOOK」データベースより)
第二次世界大戦という戦乱を乗り越え、プロ野球の復興はGHQが乗り込んでくるのとほぼ同時に始まった。食糧や宿にも事欠くなかでの連戦。二リーグ制移行をめぐって繰り広げられる、球団の離合集散と果てなき選手引き抜き合戦。そして時代は川上、大下、杉下、金田から中西、豊田、稲尾ら“野武士”たちを経て、村山、長嶋、王などスター選手が大活躍する一大黄金期を迎えた―。新資料と新証言による、日本野球史の決定版。
昨年、誕生80周年を迎えたとされる(厳密には80年前には大日本東京野球倶楽部のちの読売巨人軍ができただけらしいが)日本のプロ野球。
本書は、戦争で一時は絶たれたその歴史が復興する道筋を書いた一冊。戦後わずか4ヶ月後の1946年元日に再開した公式戦から、長嶋茂雄がデビュー戦で金田正一に4三振を喫した1958年までを200ページ余りでまとめている。
当時はスカウトやトレード、引き抜きなどのもろもろについて文字通り「無法地帯」であったのがよく分かる。こんなのに比べたら「空白の1日」なんて、江川が悪者になるほど騒動になっただけまだましである。
この本で、みなが経済的に困窮する中でなんとか始まった戦後プロ野球の歴史が学べることに異論はないが、読み物としてはどうかというと……。これを読んでいると、歴史を語るのにもセンスがいるというのがよくわかる。
というのもこの本、めちゃくちゃ読みにくい。固有名が多すぎるのだ。
青バットの大下弘、赤バットの川上哲治、藤村富美男など、往年の名選手の名前を出すのならまだわかる。
けれど、誰も知らないような裏方のスタッフまで逐一名前を出しているのである。
例えば司馬遼太郎の『坂の上の雲』なども、そのように無名の兵士を出して歴史を語るのだが、彼の作品の場合はその人物の性格を奥行きのある語り口で丹念に描いている分、読み物として成立している。それに対してこの本は、もちろん紙面の関係もあるが、多くの固有名が単なるデータであり、それを覚えさせられる読み手に激しく負担がかかる。
資料としてはもちろん有用であるが、読み物としてはビミョーである。もうちょっと固有名を整理するか、いっそ年表にしたほうが読みやすかっただろう。