
- 作者: 水野敬也,鉄拳
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2015/02/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『夢をかなえるゾウ』シリーズ、『LOVE理論』などで知られる水野敬也氏と、「こんなものはいやだ」やパラパラ漫画「振り子」などのネタで知られる鉄拳の共著第2弾。
ふたりの共著第1弾「それでも僕は夢を見る」は未読だが、機会があったのでとりあえず第2弾のこちらを読んでみることにした。
鉄拳が絵を担当し、各ページに水野氏が数行の文章を書いて進んでいく絵本のような内容で、たぶん読むのに5分もかからないだろう。
ブログがめちゃくちゃおもしろいことでも有名な水野敬也氏とだけあって、見せ方がすごくうまい。1ページ目を開くとこうある。
はじめまして――
と言いたいところですが、実は、
はじめましてではありません。
私はあなたと一度
お会いしているんです。
でも、あなたはきっと、そのことを
忘れてしまっているでしょう。
だから、まずあのときの
話をさせてください。私とあなたが参加していた、
あのレースの話を―ー
ここでまず「お、なんだなんだ?」と引き込まれるではないか。
詳しい内容はここで明かさない。
ページをめくっていくうちに薄々オチには勘づいてしまうのだけれど、見せ方がうまいだけに予想を超える読後感があるのは確かなのである。
そんな風に、ぼくの中にはベタにこの本の内容に感心した自分がいた。なるほどたしかに、そういうふうに自分の「歴史」を語られてみると、なんともジンワリとくるものがあるのである。これが確かに。
けれどその一方で、もうひとりのぼくはこの本をめくりながら「まじめに何言ってんの?」「キモチワルイ」と思っているフシがある。
頭が硬いとか、非寛容的だと思われるだろうが、実はこの本は「キモチワルイ」のである。そういう見方をする人はかならずいるだろうし、ぼくの半分も現にそう思ったのだ。
この本はたぶん一種の自己啓発本だ。
ぼくなりに定義すれば自己啓発本とは「『見方をちょっと変えると、世界はこんなに尊いし素晴らしい』というでまかせを説く本」の別名で、まんまこの本と重なるところにある。
その「見方」が突飛であればあるほど、そしてそれが自分を無条件に肯定してくれればくれるほど、読み手はなにか得たような気になり、気分よく本を閉じられる。
けれど、その「見方」の圏内に入れない者からすれば、そして、その「見方」の中にばかりいるわけにはいかないという人には、その「見方」はその「見方」に感動している人々も込み込みで、一切が「キモチワルイ」のである。
水野敬也氏のことであるから、もしかしたらこの本にはその「キモチワルイ」へ反転するギリギリのところを狙うチキンレースをしているフシもあるのだけれど。
繰り返すが、ぼくはこの本に感心している部分もあるが、同時に「キモチワルイ」と思ったのも事実である。
多くの人がたぶん感心したこと、そして感心している自分こそを大切にすると思う。でもぼくは、そういう人が多ければ多いほど、「キモチワルイ」と思える方の自分も大切にしたいと思うし、大切にすべきであると思うのである。