いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】ロンドンゾンビ紀行

公共放送でゾンビ対策が放送されたり、実際に避難訓練が行われちゃったりするほどゾンビに熱心な、イギリスからのゾンビムービー。


すでに数多くの前例があるゾンビムービーの中で、本作が試みるのは高齢者・ミーツ・ゾンビというコラボレーション。
主演は、『スナッチ』で養豚場経営者のブリック・トップを演じたアラン・フォード。戦時中はナチどもをぶち殺してやったわいフォフォフォと、今も血気盛んな老人ホームのリーダー格を熱演している。つか、『スナッチ』とキャラほとんど一緒じゃん!


そんな彼を筆頭とする老人ホームの面々が、ゾンビの群れに囲まれてしまう大ピンチ! ここで立ち上がったのが、じいちゃんを慕うロクデナシな孫たちで、わけあって銀行強盗(どんなわけだ)をしていた最中に彼らもゾンビに遭遇する。命からがら逃げ出した彼らは、武装してじいちゃん救出に老人ホームへ向かう。

作りはチープで、展開も既存のゾンビムービーとあんまり変わらないため、正直なところ中盤までは結構ダルい。
ところが、老人ホーム襲撃以降は結構笑えて、とくに歩行器を頼ってトボトボ歩いてゾンビから逃げようとする老人のシーンは、シュールを通り越してもはやノドカである。あんな和む瞬間もなかなかない。


ところで、この映画が日本と同様にイギリスで広がる「世代間格差」の風刺である、という見立てはいささか行き過ぎているだろうか。
その証拠に、老人たちが殺すゾンビは若者ばかりだ。老人ホームという安息の地に籠城した彼ら彼女らが、ゾンビをブチ殺しながら生きながらえるのである。自分の孫といっても差し支えのない年代の若いゾンビたちに、シャウトしながら銃弾をぶっ放すその姿は、まるで「オレたちまだまだ好きなだけ生きるもんね!」と言っているかのようだ。青白いゾンビと、彼らの血色の良い肌ツヤもその対比に拍車をかける。フーリガンゾンビたちは、彼らが手を下すまでもなく殺しあって自滅していたが。
そしてクライマックス、老い先短い老人と彼らを慕う少数のアホな若者ばかりが生き残ったというのには、イギリスに関する不吉な暗示のような気がしないでもない。