いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】土竜の唄 潜入捜査官 REIJI 75点


監督・三池崇史、脚本・宮藤官九郎、主演・生田斗真という豪華陣容によるクライムコメディ。麻薬密売を企てる暴力団トップを検挙するため、出来損ないの警察官が潜入捜査官「土竜」(もぐら)に抜擢される。紆余曲折をへて、彼は組織の中枢に深く潜っていくのだが……という内容。原作漫画は未読。


何よりも映画全体に敷衍するいたずら心というか、悪ふざけが楽しい。意外とクドカン成分を感じなくて、三池成分のほうが優っているような印象がある。例えばタイトルバックの「そこに入るのかよ!」感など、オフビートでバカバカしいお約束破りがいくどとなく仕掛けられる

テレビ局がバックにつく映画でありがちだけど、出演陣がとにかく豪華。なんで的場浩司がパシリやねんと思ったり、岡村隆史の面白くないわりに大変な役回りでかわいそうだと思ったりはするのだけれど、ここまで知っている人しか出ない映画も珍しい。
でも、やっぱり持っていくのは堤真一で、おいしい場面がそれだけあるということでもあるのだけれど、この人の求心力はパない。クライマックスではもはやジャンルを越境してヒーロー物みたいになってしまうのだが、ここでの堤ことパピヨンが破格的にカッコイイ。背中に蝶が浮かび上がる演出(入れ墨でなく)も、めちゃくちゃイイ。

こうした愉快で楽しい面々なのだが、潜入捜査系映画の醍醐味のひとつ「バレるかバレないか」という緊迫感が皆無なのは、指摘しておいていいだろう。そもそも、そこにこの映画の主眼はない。


なにより気になったのは、世界観がどこかチグハグに感じてしまうところだ。
主人公を始めとする主要キャラの多くは非現実的でブッ飛んでいて、彼らに合わせて世界観の方もややコミック的になる。例えばそれは、冒頭のフリチンで括りつけられて市街地を疾走するシーンに、よく現れているだろう。
けれどその一方でいまいちノリ切れていないのが暴力団上層部の面々で、ものすごくふつーなのだ。いや、暴力団だから怖いし、明らかにカタギには見えないけれど「ふつーに怖い」だけだなのだ。
特に、同じ三池監督の『悪の教典』で爆笑体育教師を演じた山田孝之。本人の性格も相まって、こういう映画ではどうしても期待が募ってしまうところだが、どーも突き抜けられない結果に終わっている
主人公の動機となる薬物についても、MDMAって……お塩先生じゃないか……。ガンギメしたようなトチ狂った人がこれだけ暴れまわる映画なのに、なんかそこだけふつーであるのが否めない。原作を読んでいないのでわからないが。要するに、ブッ飛んだ実働部隊がいるのに対して、その背景にあるとされる悪がミスマッチなのである。
兎にも角にも、イヌ好きにはたまらない良作である(なんのこっちゃ)。