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【映画評】リーアム・ニーソンがホワイトハウスに挑む 拳ではなく情報で「ザ・シークレットマン」

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リーアム・ニーソンがFBI副長官マーク・フェルトを演じる「ザ・シークレットマン」は、米国史上最大の政治スキャンダル、ウォーターゲート事件の内幕を描く硬質なポリティカルサスペンスだ。

 

 

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 同事件については、「大統領の陰謀」という作品が有名だ。同作では事件をすっぱ抜いた記者が主役で、フェルトにはスポットが当たらない。なぜなら公開当時、記者の取材を陰で指導し、事件解明に大きな役割を果たした謎の告発者、「ディープ・スロート」=フェルトの正体は明かされていなかったからだ。本作は、晩年にフェルトが自ら告白し、ディープ・スロートがなんと時のFBI副長官という大物中の大物だったという事実が明るみになったからこそ生まれた、いわば「大統領の陰謀」のアナザーサイドと言えよう。

 

FBI初代長官のフーヴァーが亡くなった翌月、米民主党本部が盗聴されるという事件が起きる。捜査に乗り出したフェルトらFBIの面々だったが、就任したばかりの長官代理(ニクソン大統領が指名!)が、あろうことか自分たちの捜査を妨害し始める。不可解な新しい上司の動きに、期せずしてフェルトは、事件の水面下で強大な政治権力が動いていること勘付く。そしてそれは、それまで捜査の独立性を保持してきたFBI最大の危機でもあった…!

「96時間」以降、その巨体を生かしたアクション映画で新たな境地を示したリーアム・ニーソン御大であるが、本作では、全く違った一面を見せる。物語冒頭、自宅プールサイドに佇む彼の内くぼんだ目と、苦労の数だけ刻まれたようなシワくちゃの顔、いつもより細っそりしたフォルムから、観客はすぐに「ああ、この映画はパンチやキックが出てくるわけじゃないんだ」と悟るであろう。本作でフェルト=リーソンが武器にするのはそのこぶし、ではなく情報なのだ。

本作でリーソンが演じるのは、FBIを陰で支えてきた守護神。ウォーターゲート事件は、FBIを30年間守り続けてきた男が成し遂げる最後の重責なのであった。かくして、捜査を妨害する政権と、情報をマスコミにリークするFBI=フェルトという本来ありえないはずの情報戦が始まる。

 

一方で彼は娘の失踪という私的な問題も抱えていた。これは何も映画の盛り上がりを意識した創作ではなく、ガチで当時はこの問題とも立ち向かっていたらしい。また映画の中では、フェルトのキャリアの暗部もきちんと描いており、非常に誠実だ。

史実に忠実であるため、銃撃戦も暗殺もない地味目な内容だが、その分、役者の演技できちんと見せ場を作っているのが見事。

なお、邦題であるが、これが精一杯かなと思う。一番気が利いてるのは告発者のコードネームだが、なにぶんこれの原義がものすごい下ネタなので使えなかったのであろう。

 

【参考記事】

www.huffingtonpost.jp

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