いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

フルボッコになった真紀子大臣から学ぶべきこと

文科相田中真紀子が、来春開校を予定していた3大学の新設を不認可したことで絶賛炎上中だ。おまけに、その炎上を受けて昨日の会見で「もう1度審査する」と明らかにヒヨってしまったもんだから、つい最近目にした真紀子氏が気分屋すぎて官僚が困っているという記事を思い出してしまった。


とはいえ、一見すると今回の彼女の主張と決断は、方向性として間違っていないように思える。大学は(それが「学位生産工場」でないかぎり)「量より質が重要」なのは明らかであるし、下げ止まらない少子化によって全入時代に突入したのに相も変わらず大学は毎年着実に増えていく状況は、どう考えてもおかしい。


だが、彼女のその「正しい」決断が、今回はほとんどフルボッコである。これはどうしたものか。
この背景には、すでに指摘されたように彼女の致命的な「根回し不足」というのがある。今回の不認可は、新設を予定していた大学関係者らや当該の大学への入学希望者、編入希望者にも衝撃を与えたが、それ以上に官僚でさえ寝耳に水だったという。正真正銘、彼女の土壇場での「気まぐれ」によって、白かったものが黒に塗り替えられてしまったのである。


もちろん、彼女は当代の教育行政のトップであり、彼女の「鶴の一声」で教育行政が変わることも、ありうる。
しかし、大学新設にはおそらく何百、何千という人が関わっていて、何億というお金が既に動いているのだろう。トップの一存で、そう簡単にすべてを白紙にすることはできない。
そう考えると、トップである大臣には権限はあるけど、実質的には「不認可することはできない」ことだったのである。建前上は大臣の判子によって物事は動き始めるが、現実的には彼女のもとに案件がくるころにはすでに彼女個人の権限では動かし難いほどできあがっている、というものなのだろう。



考えていて、これは大型トラックとそれに乗るトラック野郎の関係なんじゃないかと思った。
映画などでたまに巨大なトラックが横転するド派手なシーンがあるが、あれだけ重量のある物体が進行中に急に方向転換すれば、バランスを崩して横転するということをぼくらは感覚的に知っている。大学行政という全体を大型トラックとすれば、真紀子大臣はそれに乗るトラック野郎だ。どの道を行くか、どちらにハンドルを切るかは彼女自身で決めることはできるが、急にハンドルを切ってはならない。自分もろとも横転してしまうからだ。

自転車のような小型の乗り物なら急ハンドルを切れる(危ないことは危ないが)。だが、大型トラックやバスで急ハンドルを切れば、とんでもないことになる。同じように、組織が巨大になればなるほど、トップによる一つの決定にもそれ相応の時間とタイミングが必要ということだ。


また、ここには「サンクコスト」という観点もある。
この場合でいうと、真紀子氏の「正しい」判断によって設立寸前まできていた大学をつぶして行政訴訟まで起こされるのと、そのまま認可して大学を作るのではどちらがいいか。その観点からも考えなければならない案件だろう。


くりかえすが、大学行政全体の行く道筋としては、彼女の判断は間違ってはいなかった。けれど、殊にこの3大学の認可の段になって唐突にNOを突きつけたからこそ(=急ハンドルを切ったからこそ)、大クラッシュが起きてしまった。
あくまでも「正しい」主張と決定をした田中真紀子氏がフルボッコになった光景をながめていると、トップという名の「トラック野郎」の安全運転の重要性が痛感できる。