ohnosakikoさんのブログ。
私にとって、藤原紀香という存在はずっと謎だった。演技が特に上手いわけでもなく、喋りが面白いわけでもない。やたらとCMには出ているが、それ以外ではなんだか中途半端なポジション。あまり今風じゃないやや古臭い美人顔。顔も体も目立つから脇では使いづらいだろうし、かといって大作で主役を張れるほどの力もなさそうだし。
写真展を開いたりチャリティ活動に熱心なのも、女優として大成しない人が走り勝ちな道に見えてくる。いや、それは女優として大成した人がハマる道か。ともかくどういう層に人気があるのか、今いちよくわからない存在である。
藤原紀香という生き方 - Ohnoblog 2
このセンテンスは、おそらくかなりの人の声を代弁してくれていると思う。藤原紀香、彼女について唯一にして最大の謎は、彼女の「演技」、「喋り」、「CMの本数」（一時よりは相当減ったと思うが）、「古臭い美人顔」、そのどれをとっても、今のテレビ業界内においての彼女の高いランクに「見合ったものではない」ということ、これに尽きるだろう。どう考えても、「（周囲の扱い方も含めた）彼女の大物ぶり」と「彼女の実際のポテンシャル」は釣り合わないのだ。このことは、多くの人が共有する実感だと思われる。
ここで僕が以前に別のブログで「石田純一というタレント」について書いた箇所を引用しよう。
そもそも日本人のいうところのタレントというのは、もともとの意味を転倒させたところにある。
スポーツニュースなどよく見る「タレント集団」という表現。それは能力値の高い選手が集まっているということを意味し、タレントとは本来、才能、技量、素質といったもののことを指す。タレントを持った選手は、タレント（＝才能）があるからこそ有名なのである。
しかし日本人はどこで間違ったか、このタレントのテーゼ「才能があるから有名」を「有名であるからタレント」に読み替えてしまった。
すると、必然的に「有名であるけど何の才能もないタレント」というものも存在するようになる。海外で言うところの「セレブリティー」に近いかもしれない。
この意味のねじれによって日本におけるタレントは、何の実効性もない、ただの記号として機能することができるようになったのである。
このブログの更新の滞りには目をつぶってもらうとして、僕が石田純一について語ったことは、もちろん同じ日本のテレビ「タレント」である藤原紀香にも言えることだ。いや、もっといえば彼女は石田以上に「タレント的なタレント」なのである。なぜなら、彼女は石田以上に「なぜ彼女が？」という疑問を人々に沸き立たせる。そして何よりも、ワイドショーですら箸休め程度のネタとしてしか扱われなくなった石田に対して藤原は、まだ重大なものとしてトップニュースを飾らせてもらえているのだ。繰り返しになるが、「有名であるからこそタレント」なのだ。
「内容の空虚」（＝中身の見えなさ）と、それに見合わない「注目度」（＝人々の欲望の集中）、このアンバランスさに気づく人もいるだろう。藤原紀香とはいわば「盗まれた手紙」、言い換えれば「マクガフィン」なのである。マクガフィンは、それが「重要なものであるらしい」ということは知られているにも関わらず、何が入っているのかはさっぱりわからない。しかしその「重要なものであるらしい」という一点において人々の目を釘付けにし、あらゆる場所を行き来し、周りの人々に混乱を招く。そして付け加えると、最も効果的なマクガフィンとは、「実は何も入っていなかった」というオチのついたものなのだ。
村西とおるの「告白」は、事実なのかも知れない。しかしそれは事実のほんの一側面にすぎないのではないだろうか。彼のブログに書かれていること、それら全てが事実だったとしても、それだけでは説明できないほど、藤原紀香の今の地位は高くなっている。
女優とは人々からの「喝采」に魂を売り渡した人間であります。
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僕はこう付け加えたい。女優とは人々からの「喝采」、そしてもう一つ、人々の抱く「疑問」に魂を売り渡した人間なのだ。
喝采であろうと「疑問」であろうと、欲望の地平では等価になる。僕らは藤原紀香に対して、「どうして？」という疑問を持つ。しかしそこにもうすでに落とし穴があって、その「どうして？」こそが、藤原紀香を藤原紀香たらしめているのだ。僕らが彼女に「疑問」を抱けば抱くほど、彼女は膨張していく。
藤原紀香はかくも「タレント性」に富んだ女優なのである。
