いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】フラットライナーズ

人が生きるか死ぬかの境にいるときに訪れる臨死体験。その臨死体験を、もしも人工的に起こせたら…。エレン・ペイジが演じる野心的な医学生と、彼女に集められた同級生らが、その禁断の実験にのめりこんでいきます。彼らはこの恐ろしい実験を見事成功させる。知覚が覚醒する、という思わぬ副産物をも手に入れる。ところが同時に、彼らの身には恐ろしい副作用ももたらされます……。

「フラットライナーズ」とは「フラットライン」(=心電図が水平、つまり心肺停止の状態)から来ているようで、直訳は「心肺停止経験者」とでも言えましょうか。91年に、若きジュリア・ロバーツケビン・ベーコン、そしてドラマ「24」シリーズでヒットを当てるキーファー・サザーランドら豪華な陣容で撮られた作品のリメイクと言えそう。ちなみにキーファーは、今作において厳しい医学教授を演じています。

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結局霊なの? 幻聴幻覚??

見た目は硬質なサイコサスペンステイストですが、蓋を開けてみるとなんとも雑な映画に思えました。

今作で臨死体験を経た主人公らは、幻聴幻覚にさいなまれる。それはみな、それぞれが過去に誰かに対して犯した過ちに起因しています。

けれど、待ってください。「死んだ妹」ならばまだしも、相手が生きている人だった、という場合もあるのです。そうなってくると、彼らが体験するのは霊なのか、幻聴幻覚なのかわからなくなってくる。両者は似て非なるもので、霊は超自然現象ですが、幻聴幻覚はいわば脳の「バグ」ですよね。そのあたりをわざとなのか天然なのか、ボンヤリさせたままストーリーが進むのでむずがゆくなってきます。ただ、この霊と幻聴幻覚を混同する「症状」は91年度版にも垣間見られます。

登場人物に甘すぎ!

臨死体験を経験した彼らは、幻聴幻覚にさいなまれた末に、それぞれ罪を犯した相手に謝罪すればいいことに気づく(単純!)。

でね、実際に謝罪しに行くんですけど、これってすごいエゴだと思うんですよ。相手は酷いことをされて傷ついたけど、その傷も忘れたぐらいにひょっこり現れて、「あの時はごめんね?」ってやるわけです。そら、謝罪して償った側は気が晴れるかもしれないけど、謝罪される側は嫌なこと思い出させられるだけですからね。これ、どう考えてもエゴですよ。

特に主要登場人物の1人なんて、医療ミスで患者を死に至らしめてますからね。それを告白して謹慎処分になった〜って、いや、処分が軽すぎるだろと。

いつのまにか「失神ゲーム」レベルの軽さに

臨死体験も惰性になっていき、次第にいわゆる「失神ゲーム」ぐらいの軽さになってしまうのには笑ってしまいました。91年版はそれでもまだ、どこか節度がありました。大事をしでかしているムードは最後まであったのです。
男女比が4:1だった91年度版から、2:3となったことも頭の軽さを後押ししているように思える。映画が微妙な分、彼らがイチャこきだすとなに「保険体育」を臨床で学んでやがるんだお前ら!糞が!という気分になりました。

エレン・ペイジが出ているだけに、無意識に期待しすぎていたのでしょうか。「セル」級のサイコサスペンスを期待して観たら、偏差値の低いティーンズ・ホラーだった――それぐらいの落差があります。