昨夜行われた侍ジャパンのWBC初戦となるキューバ戦で、ヤクルト・山田哲人の大飛球を外野席から手を伸ばして捕ってしまった少年が、ネット上で叩かれています。
この場面はリプレイ判定となり、結果、山田の打席は二塁打という判定に落ち着きました。インプレーの打球(スタンドに入る前の打球)を観客が触ってしまうと、野球規約で審判の判断に委ねられてしまうのです。
もしも少年が触っていなかったら日本にもう1点が入り、さらにキューバを突き放していたかもしれない。
そういう状況から、一時は少年を指しての「クソガキ」がTwitterのトレンドにランキング入りするぐらい、激しく叩かれていたようです。さらに本人、あるいは友人が不用意にTwitter上に捕球直後とみられる画像を掲載したものだから、彼の(デマ、誤情報を含め)個人情報までも拡散してしまいました。
この少年、「ホームランキャッチ」でたぶん生涯イジられ続けることでしょう。かわいそうに。
そんな彼が「悪くない」とはいいません。プレーの結果を替えてしまったのだから、れっきとした「水差し野郎」であることに変わりない。
ただ、こういうときにぼくは「自分だったらどうしていたか」を考えてしまいます。自分が彼と同様にグラブを持ってレフトスタンドの最前列で応援している。そしてそんな自分のもとに、あの山田の入るか入らないかの打球が飛んできたら……。
とっさの判断です。ぼくは絶対に手を伸ばさない、とは言い切れないんですよね。もしかしたら少年と同じことをやっていたかもしれない。ぼくが「クソガキ」になっていたかもしれないんです。
一応、試合が行われた東京ドームシティの掲載している「野球観戦時のお願い」を確認しましたが、今回の少年の行いを明確に禁止している項目はないんです。唯一、関わってきそうなのは
フェンス、手摺りからグラウンドへボールや色紙等をぶら下げて、選手へサインを求める行為
ご利用上の注意 | 東京ドーム | 東京ドームシティ
ですが、これも今回の行為について触れている、とは言いづらい。
「誰であろうとしでかしていたかもしれない失敗」の責任を、制度の方を点検せずに本人にぜんぶ押し付けるのって、なんだかフェアネスに欠いています。飲酒運転だって誰にでも起き得る過失です。それを防ごうとして、いままで厳罰化してきたわけじゃないですか。それと一緒です。
たとえば、インプレー中はフェンスに触るのを禁止するとか、いくらでもあると思うのですよね。そのあたりも含め、「クソガキ」を叩く前に、「クソガキ」が生まれてもおかしくない環境設計でないか、今一度点検するときなのではないでしょうか。
まあね。試合は勝ちましたし、そして何よりこの方の一言でもう全て吹っ飛んでしまいそうです。
「これも野球。仕方ない。もうちょっと筋トレをして打球を飛ばしたい」
侍山田、幻弾も前向き「筋トレして打球飛ばしたい」 - WBC : 日刊スポーツ
あんたカッコよすぎるよ‼