ジェイク・ギレンホール最新作。「サウスポー」を観てきました。
どうでもいいですけど、映画タイトルでググって予告編がトップに来なかったの久しぶりでした。SEO担当さん頑張って!
ギレンホールが演じるのは、親に捨てられ施設で育った世界チャンピオン、ジミー・ホープ。無敗の王者ですが、キレやすい性格と地続きの荒々しいファイトスタイルは、毎試合観ていて危なっかしい。生傷が消えない夫に、レイチェル・マクアダムス演じる妻の心配は絶えません。そんな矢先、ジミーの性格がついに、取り返しのつかない悲劇を生んでしまい、あろうことか最愛の娘とも離れ離れになってしまいます。
カメレオン俳優、ギレンホールの面目躍如といったところです。「ナイトクローラー」では闇夜に不気味なギョロ目を光らせるサイコ野郎を演じていましたが、そんな彼がこんなハードな肉弾戦を演じ切るとは。キャラクターの実在感(ワルそな奴はだいたい友達感)がしとどにあふれています。この人、なんでもできてしまうんですね。ただ、彼の体躯だとライトヘビー級というのはちょっと大きすぎる気もしましたが…。
監督のアントワーン・フークアといえば、「トレーニングデイ」「イコライザー」など、わりと武骨で強面な作品が多いですが、今回に関しては完全に義理と人情の浪花節に振り切っています。なんといっても、ジミーの栄光からの転落っぷりがすさまじいです。そこまでいっちゃう!? みたいな。個人的には、TBS「爆報! THE フライデー」の再現VTRを見ている気分になりました。
そういった展開の現実感のなさにシラケてしまうところもなくはないですが、それでもこの作品に感心してしまうのは、ジミーの人間的な成長と、彼のファイトスタイルの転向がリンクしている点です。そこがうまかった。
よく言われますが、ボクシングはただの殴り合いではなく、その理想は「打たせずに打つ」です。先日亡くなったモハメド・アリの代名詞「蝶のように舞い、蜂のように刺す」の意味するところもまさにそれです。
ジミーは最初、いくら殴られても最後に立っている方が勝ちというような戦い方でした。けれど、本来は守ること(=「ディフェンス」)ができてこそ本当の「強さ」なのです。ぼくの大好きなフォレスト・ウィテカー(順調にモーガン・フリーマン路線を歩んでいます)が、ジミーにそのことを教え授ける名伯楽を演じています。ジミーのファイトスタイルの変化は、彼の娘への向き合い方にも変化をもたらします。
浪花節でも許せるのは、ボクシング映画だということもあります。ボクシングが題材だと、どストレートなノリが不思議と合うんですよね。この映画も、クライマックスのタイトルマッチはさすがに熱くなるものがあります。
観客席では、鼻をすする声がそこかしこから聞こえてきました。ギレンホールファンはもちろん、どストレートな浪花節で打ちのめされたい、今熱いものがみたいぜという人にもおすすめの一本です。