いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】バーバー 90点

バーバー ― 2枚組 DTSスペシャルエディション (初回生産限定版) [DVD]

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理髪師として平凡な毎日を送るエド・クレインにある日、起業家を名乗る男が訪れる。ドライ・クリーニングという新業態への投資を持ちかけられたエドは、投資資金1万ドルを捻出するため、妻・ドリスと不倫している上司のデイヴをゆする計画を立てるのだが、目論見はあれよあれよと外れていき……。

コーエン兄弟による2001年公開の作品。実はカラーで撮られ、モノクロ映画として公開されたというが、むしろなぜこのあわい発色を隠したのか理解に苦しむ。それほど、カラー版も非常にいい。


テーマ曲といえるベートーベンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」第2楽章の曲調が物語るように、物悲しいのだが、そこに独特のユーモアもまぶされた、兄弟ならではクライムコメディとなっている。

この映画の成功の一端には明らかに、主役エドに起用されたビリー・ボブ・ソーントンの存在感があると思う。基本的に無口で、くわえタバコしながら面倒臭そうに客の髪を切るその姿は、渋くてかっこいい。アンジェリーナ・ジョリーが惚れたのもわかる。


背景にあるのは、安直に言えば「幸せの青い鳥」的な教訓なのだが、次に何が起きるかを引きつける演出が上手いから、飽きずに観ていられる。
エドが、取り返しのつかない事態に陥り、自分が手にしていた生活がかけがえのないものだったと気づくところが本作には2か所ある(泥酔してベッドに寝るドリスを眺める場面と、やってきたセールスマンをドリスが撃退する場面)が、いずれもなんとも切なく、印象的なシーンになっている。


撮りようによってはウェッティになりかねない内容なのだけれど、そこはぼくの好きなコーエン兄弟の冷めた人間のとらえかたが効いていて、乾いた笑いも含まれ、泣き笑いのような独特の印象を残す。文句があるとしたら、スカーレット・ヨハンソンサザエさんみたいな髪型をしていたことだけだ。