- 作者: 島田雅彦,ヤマザキマリ
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2014/08/09
- メディア: 単行本
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本書は古本屋で買ったのだが、扉に献本されたのだと思われる紙が挟まれていた。
出版が8月で、ぼくが買ったのが9月上旬だから、もらった人はよほど早く売っぱらいたかったのだろうか。それにしても、この紙ぐらい外してやれよとは思うが。
のっけから悪い予感がただようが、結果的に、この被献本者が早々に売っぱらってしまったのもわかる気がする。
ダラダラと脈絡なく続き、結局何がいいたいのかはわからない。主人公も行き当たりばったりだが、それ以上に作品そのものが行き当たりばったりなのだ。
この脈絡のなさは、連載だからではないか? と勘ぐってしまう。その証拠に、本書は二人称の「おまえ」というやや特殊な形態をとるが、それは序盤のわらしべ長者パートではかろうじて意味ありげにみえるものの、後半の他の登場人物が主体になる場面ではまったく意味をなさないどころか、不自然でもある。後半の展開が連載過程ででっちあげられたものだと仮定すると、合点がいく。
これを機会に数冊読んでみた島田作品の中でも、本書は一番エンタメ作品然としているが、一番つまらなかった。書き飛ばしているとしか思えない。
後半も酷い展開で、ヒロインをめぐって主人公と恩師の弁護士・三島が三角関係になるが、女の執着に恐れをなした主人公が、結局三島に譲り渡してしまう。
それ自体は別にいいのだが、ここからが珍妙で、主人公のこしらえた昏睡レ●プ作戦にのった三島は、何の障害も葛藤もなく、女をものにしてしまうのだ。これでは、エンタメ小説ではなくポルノである。いや、ポルノは否定しないしむしろお世話になってますと言いたいぐらいだが、小説として面白いかといえば面白くはない。
この場面は『眠れる美女』オマージュと言い逃れることもできるが、ぼくには日経新聞を読むおじさま方への読者サービスにしか思えなかった。仲違いした主人公とも仲直りし、結局三島は何にも失っていないことになる。
結果的に一番「往生際の悪い奴」なのは、主人公でなく、いくつになっても若い女の尻を追っかける三島のオッサンということになる。もし結末で、このオッサンのペ●スがヒロインによってブッタ斬られでもしたらまだ溜飲が下がっただろうが、もちろんそうはならない。オッサンが格好のつく終わり方になるのが、なおさらムカつく。
おそらくぼくも、献本の紙を挟んだまま売っぱらうことになると思う。
↓↓この本について語った鼎談どすえ(ぼくの見解はほぼ丸かぶりだけど)↓↓
http://www.ustream.tv/recorded/53265700