いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】ファーナス 訣別の朝 70点

クリスチャン・ベイルウディ・ハレルソン、ウィリアム・デフォー、フォレスト・ウィテカーら豪華俳優陣が共演するサスペンス。ベイルが貧しいながらも堅実に生きる兄ラッセルを演じ、それに対しケイシー・アフレック(ベン・アフレック実弟)が演じるのが弟ロドニーで、定職に就こうとしないいわゆるクズなのである。
いや、こういうと語弊がある。舞台はロクデナシしかいないような片田舎で、兄のようにまともな職が続く方がレアなのだ。ただ、そんな兄も飲酒運転で収監されてしまうのだが。


原題のOut of the Furnaceは、直訳すると「溶鉱炉の外」という意味だが、本作におけるFurnaceはラッセルが勤めている製鉄所を意味するものと思われる。ロドニーにとって父親、兄と代々務めている製鉄所はカタギのつまらない仕事なのだ。結果、彼はその外側に広がるアンダーグラウンドな世界にどうしようもなく、魅せられていってしまう。


荒くれ者しかいない寂れた片田舎、みたいな雰囲気が本当にいいのだが、飛距離が思いの外伸びなかったというのが正直な感想。おかしいぞ、このメンツ、この雰囲気なら、もっと行けるだろ! とどうしても思ってしまう。クライマックスのシーン(思えばここも"Out of the Furnace"だ)も、あともうひと展開あれば傑作になっていた気がするのだが、どこか物足りないというのは高望みだろうか。

個々の役者は素晴らしい。特に評価したいのはケイシー・アフレックイラクでの悲惨な体験から、自他へと向ける暴力衝動が抑えきれなくなった悲しき男は、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』、それから『ペントハウス』とは全く別のキャラクターだ。いまや宇宙の守護神一味、ゾーイ・サルダナも、釈放後のベイルとの再会の場面なんて、なんかみていてたまらなくなった。ウディ・ハレルソンの本物感もでている。


なのになのに、全体としてこの作品を諸手を挙げてサイコーだと言えるかというと、首をかしげざるを得ない。それだけもったいない気がした一作。