【映画】脱パニックムービー? or 亜パニックムービー?――映画「テイク・シェルター」
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- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2013/07/26
- メディア: Blu-ray
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主演のマイケル・シャノンのキャラ立ちが素晴らしい。いかにも頭のおかしなことを言いそうというこのキャラクターに必要な要素を体現している。正当なパニック映画の男らしい主人公には、どうやっても見えない。出るとしたら、パニックが起こる寸前に荒唐無稽な不吉な予言を喚きたて、周囲に冷笑されたり、黙殺されたりする、あの人である。そんな彼が主演を飾っていることが、この映画のミソなのだ。当代一の幸薄顔女優ジェシカ・チャステインも、妻サマンサを通じてその顔力が存分に発揮している。
失踪した母親と自分を重ね合わせ、家族を守るためにカーティスは動き回る。彼の脳裏には、いち早く災害を予見したことへの功名心も優越感もない。悪夢への恐怖心と、家族の安全だけを思ってのクソ真面目な彼の行動が、かえって妻や同僚の不信を買っていく過程は、いたたまれなくなる。けれど、肝心の災害は起きない! いつまでたっても世界は平和のままなのだ! そう、この映画は脱パニック映画的な作りをしたパニック映画だ。
妄信的に災害対策にまい進する彼をみるにつけ、しだいに観客はわからなくなる。彼が災害から逃避しているのか、それとも災害など起きないという事実から逃避しているのか、あるいは、シェルターの外の世界が崩壊しているのを恐怖しているのか、外の世界に何も起きないことに恐怖しているのか、を。
クライマックスに、もうひと展開ある。この展開を真に受けるなら、本作が実はパニック以前が異常なほど引き延ばされた、ものすごく歪なパニック映画、いわば"亜パニック映画"ということになる。
本作が脱パニック映画なのか、それとも亜パニック映画なのか――その判断は観た人に委ねたい。