いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

【映画評】遭難者/女っ気なし

フランス人男性について、人はどういうイメージをもつのだろう。ぼくの中では、四六時中女の尻をおっかけ、隙さえあればジュテームジュテームシルブプレとやってるイメージなのだろうが、どうだろうか。

連作となるこの2作は、そうした仏男性のイメージと一線を画す男の映画。遭難者がプロローグ的内容であるのに対し、女っ気なしが本編というべきか。
寂れた港町で独りで生きる男シルヴィアには文字通り、女っ気がない。町中知り合いだらけで女の知り合いがいないわけではない。けど、「女」として見ている女性はいないし、彼のことを「男」としてみてくれる女性も1人もいない。家でWiiのテニスゲームに明け暮れる毎日だ。


このシルヴィア、外見は多少小太りでハゲちらかってはいるが、高い鼻とつぶらで多少たれぎみの瞳は映画「ファーゴ」に出てきたピーター・ストーメアの面影を連想させる。そう、世に言う「痩せたらモテる」の部類で、決してブサイクでない。
それでも彼がモテないのが一目瞭然なのは、その挙動不審な仕草から漂うただならぬものがあるからだろう。女性と相対したときのぎこちなさは、かわいさを通り越してちょっと不気味。
彼自身の人恋しさが募っているのがわかるのは、異邦の困っている男に必要以上に優しくする姿からだ。性別をとわず、優しさをもとめて優しくしてしまう姿は、なんとも健気。一方他人の彼女との仲睦まじいメールの往診に勝手に返してしまうあたり、狂気を感じることは否めないが。モテないあまりますます挙動が変になり、ますますモテなくなる。悪循環である。


そんな女っ気なしな彼が女っ気ないままでは話が進まないわけで、ヴァカンスでやってきた美しい母娘に宿を世話した縁で知り合う。この母娘、どちらがいいと思うかは分かれると思われるが、ぼくはこの母親役の熟女のかもす「酸いも甘いも経験しました」感がたまらなかった。優しくしてくださいといいたくなる。

シルヴィアも彼女の方にほのかに想いを寄せ始めるが、話はそう上手くもいくわけもなく、ここから横やりが入ってくるわけである。男とはもう寝ないと言っていたはずの母親が、やはり誘惑には勝てない様はとても色っぽく、そしてそんな彼女のことがたまらなく心配そうな娘との関係は、近頃悪い例ばかり取り上げられる「母娘」関係とはまたちょっとちがう、キュンとさせられるものがある。


この映画、観終わってみたら何のことはない、われらが花沢健吾ボーイズ・オン・ザ・ラン」と同じ構造をもっているのだ。てっきり、あれはジャポンのメンズ特有の精神構造かと思っていた。それだけに、なんだ、仏男性にも話のわかる奴がいるではないか!と、深くうなずいてしまった。日仏友好の架け橋がかけられた瞬間である。