イギリス人作家トールキンの『ホビットの冒険』を原作に、『ロード オブ ザ リング』のピーター・ジャクソンがメガホンを撮った3時間のファンタジー超大作。
『ロード〜』との関係で考えれば、前日譚が描かれ世界観がリンクしているこの映画は、近頃流行の「ゼロもの」と位置づけることができるのかもしれない。
また、『ロード〜』とこの『ホビット』を時系列の番号を振り、公開順に並べ替えてみれば、4→5→6→1→2→3となる。これはジョージ・ルーカス『スターウォーズ』シリーズの並び方と一致しており、他にも、トールキンが一時期神話の研究にハマっていたのに対し、『スターウォーズ』を作る際にルーカスが神話を参考にしたことなど、共通点が多い。誤解を恐れずにいえば、ピーター・ジャクソンによるこのトールキン“6部作”は、21世紀のスターウォーズといえるのかもしれない。
3D上映を観たのだけれど、飛び込みでの鑑賞でコンタクトでなく眼鏡をかけていた。そのせいで、終始しっくりこないXpanD用のメガネが気になっていたことは残念だが、それでも、この手のファンタジー映画ではもはや必要条件になりつつある、大軍勢のドドドドドドドドドドド
や、天地が割れてズガガガガガガガガガガという飛び出す大迫力VFXは、それ単体でも一見の価値がある。少しでも興味ある人は、2Dでもいいからこの映画は映画館で観て方がいいと思う。
はなれ山エレボールのふもとで栄華をきわめていたドワーフの王国が、突如舞い降りた火竜によって侵略される。その約60年後、国を失ったドワーフの王の孫が、12人の仲間と1人の魔法使いのパーティーで故郷奪還の旅にでる。魔法使いガンダルフに見いだされたホビット族の青年ビルボ・バギンズが彼らに加わり、本当の仲間として認められるまでを描いているのが、この第一部だ。
よくいわれるけど、ドラクエとかFFなどのRPGのもとになっているので、ストーリーは横に置いても、こうした世界観や時代観、背景に惹かれる人は多いんじゃないだろうか。
ストーリーもわりと単線的で、原作未読だったのだけれどほとんど「は?」とはならなかった。ただ、「中つ国」や「ホビット庄」など、原作『ホビットの冒険』独特の用語、言い回しが散見している。エンドロール後に示されたが、岩波から出てる訳書にかなり忠実にやっているらしいので、余裕がある人は予習しておいてもいいかも。
- 作者: J.R.R.トールキン,J.R.R. Tolkien,瀬田貞二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/08/18
- メディア: ペーパーバック
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「故郷、まだまだ遠いじゃん……」
と思ってしまったのが偽らざる気持ち。エレボールまでの道のりの途方もない長さは、おそらくこの映画と同じくらい長い続編があと2つもあるのかという多くの観客の気持ちとシンクロしている。
気になったのはバトルシーンで、決着の仕方のパターンが似てしまっている。ネタバレになるから詳しくは書かないが、3時間という長さよりもそちらの方が気になった。また、敵の造形がワンパターンすぎるのも残念。行く先々で主人公たちは別々の種族らと戦闘になるのだが、相手がみな「山海塾の人ですか?」 といいたくなる灰色の丸坊主野郎なのだ。これは原作の忠実な再現なのかもしれないが、2部からはもっとバラエティに富んだ敵にわんさかでてきてもらいたい。
けれど、全体的に観ればおおむね良好で、映画泥棒の新バージョンの映像より一億倍観る価値がある。つづく2部作がどう転がるか分からないだけに、「押さえておく」という気持ちで観ておいても損はしないだろう。