いいんちょさんのありゃあブログ

85年生まれ、おうし座。今考えてることと、好きなこと、嫌いなことについて

ホントに終了したのはj-popではなく…

VIPPERな俺 : j-pop終了のお知らせ 初音ミクがオリコン1位

初音ミクのコンピが一位を飾ったというニュースを受けての話なのだけれど(それにしてもオタソングって大枠ではj-popにもいれてもらえないんだろか?)、どうやらそうらしい。


だがこの表現は少し語弊がある。「終わった」のはJ-popではない。大枠で言うと初音ミクもJ-popだからだ。「終わった」のはjpopではなく、また(CD売り上げの指標として機能している限りにおいて)オリコンでもない。では何が「終わった」のか。



ところでなぜ、オリコンにかつては権威があったか?


それは、なにもあの物故した名物会長に特別な威光があったからではない。もしかして彼のカリスマ性も影響あったかもしれないけれど、少なくともそれだけではない。


オリコンにかつて権威があったのは、それが社会の流行廃りを反映していたからだ。オリコンで一位を飾ることに、それなりのステータスがあり、実際に一位になっていた曲は、ある程度みんな認知していたのだ(それだけにあの社長は、「レコード売り上げ」が流行の指標になるといち早く判断し、日本にランキングをもたらした先見の明こそ、評価されるべきだ)。


僕からすれば、CDの売り上げが市場全体的に下降したり、自分の好みでない曲がトップテンを飾っていたりすることより(昔もそのくらいいくらでもあった)本当に深刻なのは、初音ミクの曲がトップに立ったことよりも、トップに立った初音ミクの楽曲が、実質的には社会的な影響力をなんらもっていない、ということの方なのだ。


そう、真に「終わった」のは、オリコンといわば社会的イコンとの、蜜月の関係の方だ。
もはやオリコンやその他のチャート誌が発表するCD売り上げというものが、その時その時の「今何が来ているか?」を反映しなくなった。裏を返せば、CDの買うということが、社会的イコンの形成にもはやコミットする行為ではなくなっているということ。それだけに、ここで問題なのは、僕が一昨日に書いた意味での「終わった」なのかもしれない。



この兆候的なものを、年末(か)年始(のどちらか)に放映されていた、カウントダウンTVにて目撃した。番組では2000年から09年にかけてのシングルCD売り上げのスト100をカウントダウンしていた。そこで、興味深い現象が起きていたのだ。


00年〜09年のこの十年とはCD、特にシングルCDの売り上げがガクッと落ちた10年と、ぴったり符号する。だから前半部分、つまり100位〜50位くらいまでのランクの下部分で、06年〜09年のヒット曲と呼ばれるものが出そろってしまったのだ。そうなると、奇妙な現象も起きてくる。例えばここ数年の年間一位を飾っていたあの曲この曲が、よもやロードオブメジャーにとって空前絶後のヒットとなったデビューシングルより下になってしまう、などなど…。


もちろんこれは過渡期的な状況であるがためで、これから先CDの売り上げが下げ止まれば、どのCDが売れたかということについての定点観測は再び可能になるだろうけれど、やはり問題の本質は売れて数十万という指標が、かつてほど社会的イコンではなくなってきている、ということだ。


90年代よりもっともーっと昔に、数十万レコードが売れたことはたしかに全国的なヒットを意味していただろうけれど、今はわけがちがう。かつてはレコード以外音楽を聴く方法はたいしてなかったのだ。それだけにそれが「今流行っている音楽は何か」は意味した。でも今はCDを聴く以外腐るほど「音楽を聴く」方法は転がっている。だからかつてレコードが売れたら「流行ってる」といえたが、今やCDが「流行ってる」とは言えない。



こうなってしまうと何が、そして誰が困るかというと、おそらく表面的には売っている側くらいだ。聴く側の困ることと言えば、いわば世間話のネタが一つ減ったということと(そういえば、自分がipodウォークマンに入れてる曲を友達と話し合ったりしないのは、みなそれが「世間話」にならないくらい離散してしまっている現状に直感的に気づいているからだろうか?)、年末年始の昔を懐かしむ系の特番で「なつかしー!!」と家族総出で絶叫できなくなる、それくらいだ。


でもなかには、「今の流行がわからない」ということで不安を催す人もいるかもしれない。そういう人のために、既存のチャートとはまた別のランキングが雨後のタケノコのようににょきにょきと林立し始めているが、林立しているからこそ、逆に全体として権威を失いつつあるという悪循環もそこにはある(ほら、世界一がなぜだか何人もいるボクシングの世界チャンピオンみたいに)。


だから、これからは「情報コンサルタント」という職業が、あんがい儲かるんじゃないだろうか。
それは、たぶん今この言葉を聞いた人がもつイメージのような職種ではない。「今の流行がわからない」ということで不安を抱いている人に対して、「大丈夫、あなたみたいにカンカン帽がよく似合う女性は、西野カナを聴いとけばいいんです」だとか、「強面だけど情にもろい性格をお持ちになるあなたはEXILEだとか湘南乃風を聴けば主流から外れませんよ」だとか諭して、その人を勇気づけてあげる存在だ。


もちろん今のはわかりやすすぎる。それくらいテレビ見てりゃすぐわかる。問題は、EXILEだとか西野カナとか生きものがかりを友達に勧められ、自分もこれが好きなんだ好きなんだと思い込ませて聴いていることに、苦痛を感じている人だ。そういう人に対して、「キミ意外と中島みゆきいいかもよ」とか「キミ実は頭脳警察が合うかもしんない」と、正しき道を指し示してあげる存在こそが、僕のいう「情報コンサルタント」なわけだ。