「めちゃ²イケてるッ!」が終わった。
22年の歴史に幕を下ろした。
以前にも書いたようにぼくは、かなり前にファンであるのをやめたような状態だった。
かつては1分でも見逃してなるものかとテレビにかじつき、どうしてもリアルタイムで視聴できない場合はビデオに撮っていた。
それが次第に、録ったビデオがたまっていき、さらにビデオに録るのを忘れても大してがっくりしなくなり、完全に見なくなったのがここ数年。
以前書いたように、ぼくの心はすでにこの番組から離れていた。
もう何年もきちんとは観ていない。
そんな中で、恐る恐る見たのが最終回だった。
5時間半に及ぶ最終回を観ながらぼくは、見当違いでにもほどがあるが、元福岡ソフトバンクホークスの大エース、沢村賞投手の斉藤和巳氏の引退セレモニーを想起した。
斉藤は肩を怪我したあと、何年もリハビリに費やし、ついにはリハビリ担当コーチという特例の肩書になってまで球団内で復帰に向けて努力していた。
ファンも何年も待った。ファンからしても、斉藤は待つに値する選手だったのだ。途中でスザンヌとちゃっかり結婚したりしてたけど。
そんな斉藤が、ついに力尽きて引退を決断したのが2013年だった。
彼が久々にユニフォーム姿で公の場に姿を表したのが、全盛期にバッテリーを組んだ”釣り人”城島健司を従えてあらわれた引退セレモニー。
引退セレモニーでは、おそらく生涯最後となるユニフォーム姿でのピッチングを披露した。
全盛期の鬼神のごときピッチングを知っているものならば、他球団ファンであろうと注目したであろうその最後の一球。
ワインドアップで斉藤が放ったそれは、なんと城島のミットに届かなかったのだ。
(パシフィックリーグ公式動画、4分ごろから)
数えて4球目にして、ようやく斉藤の球は城島のミットに収まった。
ぼくは、そのときのなんとも言えない感情になった。
斉藤の投球に、球場全体が温かい笑いに包まれたし、実際それは感動的だった。
しかし、やはり全盛期のあのピッチングを知っている者からすれば、ものがなしく、やるせない気持ちになったのである。
斉藤の現状を知らない他チームのファンとしても、一度でも1軍のマウンドに帰ってきてほしいと思うもの。
「今の斉藤」の投球を見て、「こんなになってしまっていたのか…」という気分になったファンも多いのではないか。そのとき、彼がついに現役復帰を諦めたのもわかる気がした。
長々書いてきたが、今回久しぶりにめちゃイケを観た時に、まさに斉藤の引退セレモニーを想起したのだった。
往年のめちゃイケに思いをはせながら見る最終回。
もはやそこに、かつてあった斬新な企画や、ニヤっとさせられる気の利いたテロップもない。
「なつかしさ」以外では画面に映るなにひとつに感心できなかった。
そのことが何よりも悲しかった。
斉藤の引退セレモニーでの投球が悲しかったのは、彼が並みのいい選手だったからでなく平成を代表する大投手だったからだ。その残像がぼくたちには残っている。
それと同じだ。子どものころのぼくらの話題をさらっていった「めちゃイケ」が脳裏にまだあったからこそ、今のめちゃイケの姿は悲しく、「ああ、もう終わってもいいな」と思えてしまった。
でもこれはあくまでもぼくの主観であって、もしかしたら、今も毎週楽しみにしているファンは、まだまだ続いてほしいと思うものなのかもしれない。
ただ、今のめちゃイケの面白さはぼくの心にまでは届かなかった。それゆえに、最終回を迎えるのはふさわしいと思うし、お疲れさまでしたと送り出したいと素直に思ったのであった。